導入事例

AIカメラが来店客の行動を分析!発見と体験を売るアメリカ発ストア「b8ta」とは?

AI Start Lab 編集部 2021.4.21
シリコンバレー発の体験型ストア「b8ta(ベータ)」。前衛的なプロダクトの展示や販売、AIカメラを活用した行動解析、 売ろうとしない接客など、新しい小売のスタイル「RaaS(Retail as a Service)」を展開している店舗だ。

現在日本では、有楽町と新宿に2店舗を構え、トレンドに敏感な人たちを中心に賑わいをみせている。

従来型の小売店とは一線を画し、新たなショールーム型の店舗で人々を魅了するb8ta。その革新性と人気の秘密に迫るべく、b8ta Japan代表の北川卓司(きたがわ・たくじ)氏に話を聞いた。

消費者マインドに刺さる、b8taの“売らない接客”



2015年、b8taはスタンフォード大学やテスラモーターズの本拠地がある、シリコンバレー北部のパロアルトに1号店を開設。商品化を見据えたクラウドファンディング中のプロダクトや、市場に浸透していない最新ガジェットなど、新しくてめずらしいアイテムを扱うストアとして人気を博している。

現在までにアメリカ国内に10店舗以上、2020年8月には、ドバイに次ぐ海外2拠点目となる日本に進出し、有楽町と新宿に2店舗を同時開業した。ECに押され、従来型の小売店が苦戦を強いられているといわれるなか、b8taは世界で店舗数を伸ばし続けている。

その理由について、北川氏は「発見や体験というコンセプトが多くの消費者に受け入れられている」と話す。


「我々のミッションは、リテールを通じて人々に新たな発見と体験をもたらすことです。このミッションを達成するために大切にしているのが、“売ることを主目的としない接客”です。もはや”売らない接客”と言い切っても良いかもしれません。店舗にお客様が長く滞在し、さまざまなアイテムを見て、触ってもらえる環境づくりを意識。ときにはb8taテスター(店舗スタッフ)が一人のお客様に付きっきりで、ブランドの哲学や商品開発にまつわるストーリーをお伝えすることもあります」

b8taテスターは、製品情報のみならず、出店企業の理念もインプットするため特別なトレーニングを受ける。また、売上によって接客の評価が左右されないので、来店客の発見や体験に重きを置いて接客できる、というわけだ。一方、販売を目的にした接客になると、そうはいかない。

「店舗ごとに売上目標が決まっていると、接客スタッフには効率の良い接客が求められます。たとえば、『今だけ20%OFF!』のようにお得な情報を提示して購買意欲を刺激したり、スペックの優位性を説明したりする接客です。b8taは同じ小売業ですが、ミッションに大きな違いがあるため、来店客へのアプローチがまったく異なります」(北川氏)

b8taの“売らない接客”は、b8taテスターのコミュニケーションから店舗設計に至るまで、細かいところに反映されている。たとえば、来店時には「いらっしゃいませ」ではなく「おはようございます」「こんにちは」を使うこと、店内が雑多だと疲れやすいので、ディスプレイは商品とタブレットのみで統一することなど。また、商品の陳列棚は、日本人の平均身長にあわせて設計されており、商品を長時間眺めても疲れにくい高さに調整している。

店舗で取得した行動データや反響を出品者に提供



気になるビジネスモデルだが、b8taの収益は出品者が支払う出品料のみ。1区画のサイズは約40cm×60cm、1カ月の出店料は約30万円で半年以上から契約できる。日本で展開する2店舗は、有楽町駅徒歩1分の路面店と、新宿マルイ1階という好立地だけあって、出品を希望する企業は後を絶たない。

また、企業にとって、b8taにマージンを支払う必要がないのも魅力。来店客が店舗で商品を購入してもしなくても、b8taの収益は変わらないため、タブレットで流す商品説明動画にECサイトへ誘導するQRコードを映す企業も少なくないとか。こうしたユニークなビジネスモデルも、b8taの躍進を支える要素のひとつだ。

「創業初期はガジェットしか取り扱っていませんでしたが、現在は多様な業界からのリクエストを受けて、食品や伝統工芸などを含めた幅広いアイテムを置いています。出店の基準は、公序良俗に反するものや健康被害が懸念されるもの以外としており、基本的に何でも取り扱うことができます。ただ、ほとんどのお客様は、新しい発見と体験を期待してb8taに足を運ばれるので、ぱっと見て理解できる商品よりも、説明しないと分からないような商品の方が人気です」

b8taがユニークなのは、販売スタイルだけではない。来店客の行動をリアルタイムで追跡し、出品企業にデータを提供しているところも、他の小売店にない特徴だ。



「店内には、年齢層と性別を識別する『デモグラフィックカメラ』と、店内の行動動線・立ち止まり率が分かる『AIカメラ』を天井に設置して、来店客の行動をトレースし、出店企業のダッシュボードに送信します。さらに、b8taテスターによる接客回数や定性的な反響も、ダッシュボードのチャットを介して伝えています」

こうしたデータを取得できるところが、リアル店舗の強みだと北川氏。

「ECなどのオンラインショップでは、カゴ落ちの数は分かりますが、買わなかった理由までは分かりません。しかし、リアル店舗では、行動の分析と来店客の声を拾うことによって、定量定性の両面から商品のマーケティングを実現できます」

たとえば、某ホームセンターは、プライベートブランドの商品を手掛けるにあたり、発売前の半年間b8taに出品。色を何パターンか変更し、反響を集めたうえで、商品化に活かしたそうだ。

オンラインショップが成熟した今、リアル店舗には体験が必要



サービスとしての小売(RaaS)は、日本ではまだ馴染みの薄いビジネスモデルではあるが、手応えを感じていると北川氏は言う。

「オンラインストアが成熟した今だからこそ、オフラインの楽しさや面白さが注目されていると思います。今後は、体験型の店舗が増え、従来型のように売ることが主目的の小売店は淘汰されると予想します。ただし、どこでも買えるものが並んでいるお店だと、足を運ぶ理由がありません。“そこに行く意味”“そこでしか体験できないこと”が必要です。他の小売店にはない切り口を突き詰めると、必然的に体験型の選択肢が浮かび上がるのではないかと思います」

今後、店舗で取得するデータも、商品を手に取ったかどうかやその時の表情など、より増やしていけると面白いと語った北川氏。こうしたデータが増えれば、いままでのマーケティング手法では気付けなかったインサイトが発見できるかもしれない。


実証実験が行われた「Virtual b8ta」

さらに、「オフラインとオンラインの境界線は、曖昧になっていくと考えている」と語る北川氏。b8taでは、2021年3月22日から24日まで、バーチャルとリアルを自由に行き来する体験が提供できる、凸版印刷の「IoA Shopping」の実証実験として、バーチャル空間上に「b8ta Tokyo - Yurakucho」を構築した。

これは、バーチャル空間上に構築したb8taの店舗に、スマートフォンからアクセスできるというもの。リアル店舗にいる店員とビデオ通話をしたり、AR技術を活用して商品を体験できたりと、まるでリアル店舗にいるかのような買物体験を叶えることが可能だ。

今回は実証実験として行われたものだが、今後もオフラインとオンラインの垣根を越えるような取り組みも進められるかもしれない。

オフラインからオンラインへ購買行動の移行が著しい昨今。b8taは、その傾向に待ったをかけるかのごとく、発見と体験を通して人間の好奇心を刺激することで、独自の存在価値を高めている。


取材・文=末吉陽子
撮影=齋藤葵

b8ta | ベータジャパン – b8ta Japan
https://b8ta.jp/

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WRITTEN by

AI Start Lab 編集部

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