導入事例

混雑情報のインフラ構築へ!「トクバイ」企業発の3密回避ソリューション「混雑ランプ」

AI Start Lab 編集部 2021.5.21
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ対策として掲げられる3密回避。2020年3月に、政府や東京都知事が3密を避けるように呼びかけて以降、民間企業では3密を可視化するソリューションが相次いで開発された。

株式会社ロコガイドが手掛けた「混雑ランプ」も、そうしたソリューションのひとつ。信号機を模したアイコンをHPなどに設置し、混雑状況に応じて赤黄青のランプを点灯させるというシンプルなツールだ。

使い勝手の良さと利益度外視の価格設計で、小売店や自治体などが続々と導入。ウィズコロナ時代の混雑情報インフラを支える事業者として、頭角を現している。「混雑ランプ」開発の経緯やこれからの展望について、詳しい話を聞いた。

小売店が抱えるコロナ禍の困りごとが開発のきっかけに



「混雑ランプ」を開発した株式会社ロコガイドは、スーパーなどのチラシや買い物情報を閲覧できるサービス「トクバイ」の運営を主力事業にしている。その会社が、なぜ3密回避ソリューションなのだろう。

自治体向け事業の推進責任者である、地域情報部の石井一弘(いしい・かずひろ)シニアディレクターは、次のように話す。

「当社は、地域のアナログ情報をデジタル化して、生活者の皆さんに分かりやすくお届けするため事業を展開しています。『トクバイ』も、この考えに基づきサービスを提供しています。同じように、施設の混雑情報も、実際に現地へ行ってみないと分からないアナログ情報です。これをデジタル化し、広くあまねく伝えることは、当社の理念にも通じるため、開発に着手することになりました」(石井氏、以下同)

3密対策にまつわる小売店の困りごとをキャッチしたのは、2020年3月頃のこと。「トクバイ」で小売店を受け持つ営業担当から「『たくさんのお客様に来てほしいが、特売情報を発信すると3密になってしまう』とジレンマを抱える小売店が増えている」という話を聞いた。

「小売店の皆さまが、お客様や従業員の安心安全を確保するための方法を模索していると知り、私たちに何かできることはないかと、社内でアイデアを出し合いました。具体的にどのようなサービスが必要か考えたとき、まずはシンプルに“混雑情報の発信”ではないかと。混雑情報を正しく伝えることにより、人々の行動変容を促すことができれば、3密回避につながるのでは、という結論にたどり着きました」

急ぎ3密回避ソリューションの開発チームを結成し、企画を練り込むことになった。

現場が察知した混雑感を“信号機”でリアルタイム表示



そして生まれたのが「混雑ランプ」だ。こだわったのは、徹底した分かりやすさ。子どもから大人まで、一目で混雑状況を把握できるデザインを突き詰めた結果、信号機マークに辿り着いた。

もうひとつ検討事項として重要だったのが、混雑状況をどこまで細かく設定するか、そして誰が混雑状況を発信するか。これらについては、現場の判断に委ねることが最善という結論に至った。

「お店によって混雑の尺度は異なります。たとえば、スーパーのレジは2分ほどで会計が終わりますが、呉服店の接客は1人あたり1時間以上かかることも。その場所にいる人数が同じでも、混雑しているかどうかは業態によります。そこで、現場で接客する人が混雑状況を判断し、手動で情報をアップロードすることが最善だろうと判断しました」

3密回避ソリューションの中には、センサーで人数を測定できるものもある。しかし、混雑しているかどうかは、主観的な判断に委ねられている部分もある。だからこそ、手入力で情報発信することがベストだと考えたという。もちろんコストも無視できないポイントだ。

「センサーで計測するとなると、コストが嵩んでしまいます。大手百貨店などは導入できるかもしれませんが、商店街にある小規模のスーパーでは難しいと思います。我々は、あらゆる規模の小売店に導入してもらいたいと考え、月額利用料は無料、初期費用2,000円、HP連携5,000円(ともに税抜)という低価格での提供を決めました」

かくして完成した「混雑ランプ」。具体的な仕組みはこうだ。

まず、利用者には専用のiframeタグが発行される。このタグを使ってWebページに「混雑ランプ」を埋め込む。ここまで、設定には3分もかからない。Webページに表示された「混雑ランプ」の点灯は、スマホ・PCで操作可能だ。混雑時にもサッと操作できるよう、シンプルな作りになっている。
また、スマホが使えない環境でも対応できるよう、専用のボタン型端末(IoT端末)も提供している。

「混雑ランプ」管理用アプリの操作画面

ボタンが一つで操作しやすい専用端末

とある小売店では、レジやサービスカウンターにボタン型端末を置いて、全体の混雑状況を判断した担当者がボタンを押して運用をしているという。また、利用しやすいように、通常は青(空いている)状態に設定しておき、混んできたら変更するパターンや、必ず混む時間帯は赤(混んでいる)状態に自動で切り替わるように設定するパターンなど、使い手の事情に応じてカスタマイズできるよう設計した。

混雑情報を社会インフラとして確立させたい


自治体窓口での利用イメージと自治体サイトでの混雑情報掲出イメージ

2020年5月のサービス開始以来、取引先だった小売店への導入を皮切りに、水族館や温浴施設などさまざまな業態への導入が勢いを増した。そんなある日、「混雑ランプ」の評判を偶然耳にした静岡県浜松市から、市役所の窓口サービスの混雑回避に活用できないかと打診があった。

「市役所の窓口サービスは小売店と異なり、訪れた人は呼ばれるまで順番を待たなければならず、能動的に動けません。どうしても人が滞留してしまい、3密になりやすい場所だといえます。とはいえ、小売店と異なり、人によって相談時間が様々なので、混雑ランプの活用は難しいのではという懸念もありました」

自治体での利用イメージ

そこで、まずは実証実験というかたちで導入をスタート。「混雑ランプ」を浜松市のHPに表示したところ、導入前は窓口の混雑状況について、毎日100件から200件近い問合せがあったところ、2件程度まで減ったという。

「浜松市の担当者の方からは、『いろいろな場所に混雑ランプを導入してほしいと、市民の皆さんからご意見が寄せられており、拡大を進めたい』と伺っています。浜松市の事例を発端に、静岡市や前橋市など、自治体への導入が続々と進みました。住民の方からの反応もよかったようです。さらに、静岡市では、 市役所内で実施している業務改善に関する表彰で、令和2年度の市民サービス部門『BESTカイゼン賞』を受賞しました」


そして、2020年12月、東京都は混雑ワーキンググループの立ち上げにあたり、協力事業者にロコガイドを選出。現在までに、東京都が保有する公共施設84か所に「混雑ランプ」を導入した。東京都の担当者からは、サービスの仕組みや混雑情報の画面表示が分かりやすいと評価されている。さらに、2021年1月には、NTTレゾナントが運営する「goo地図」への「混雑ランプ」の混雑情報掲載を実現するなど、取り組みを拡大している。

「3密回避はもちろんですが、誰しも混雑は嫌ですよね。だからこそ、混雑ランプは社会的なインフラとして広めるべきサービスだと考えています。ちなみに、とある寺院では、お正月の参拝の混雑状況をHPに掲載するために混雑ランプを導入し、いまなお活用しています。混雑が集中しない時期でも、情報発信が集客につながります。ウィズコロナ、アフターコロナの時代においても、混雑ランプによって混雑情報の地域インフラ構築を進め、新しい日常を支援していきたいと考えています」


今後混雑情報をデータ化し、マーケティングにも利用できるようにサービスを発展させたいとのこと。また、「goo地図」との連携と同様、既存の飲食店予約サービスとの連携なども視野に入れているそうだ。

コロナ禍をきっかけに開発された「混雑ランプ」だが、混雑を回避したいという人々のニーズがなくならない限り、これからも普及していくはずだ。今後、混雑情報のインフラを担う筆頭事業者として、ロコガイドの名前を目にする機会が増えるかもしれない。


取材・文=末吉陽子
撮影=齋藤葵

株式会社ロコガイド
https://locoguide.co.jp/
混雑ランプ
https://crowd.locoguide.jp

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AI Start Lab 編集部

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