導入事例

今こそAIで画像解析を始めよう!AI画像解析のキホンと活用例を徹底解説

山際 貴子 2021.6.8
AI画像解析は、ハードウェアの進化によりディープラーニングの技術が適用できるようになったことから、飛躍的に精度を高めた。今や身近なシーンで活用されている。

しかし、いざビジネスでどのように活用できるのか、イメージできない方も多いのではないだろうか。そこでここでは産業別にAI画像解析の活用例を紹介する。


AI画像認識の精度が向上したことで、さまざまな領域で解析が可能に



AI画像認識とは、画像や動画から文字やモノを識別する技術だ。自動運転や自立ロボット、画像検索への活用で期待されている。

画像認識自体の歴史は古い。例えばOCRも画像認識の一種であり、日本では1968年に初めて製品化された。また、アメリカで顔認証のコンテストが開始されたのは、1993年のことだ。しかし、このころまでは特定の環境で特定の物体について認識をする方式が主流だった。

しかし2000年代に入り、実世界で撮影された画像から一般的な物体やシーンを認識する「一般画像認識」が急速に発展した。一般画像認識により、応用先の幅が一気に広がったのだ。

一般画像認識を実現する技術がディープラーニングだ。ディープラーニングは脳の神経細胞(ニューロン)の働きを模した学習アルゴリズムで、多数の人工ニューロンを多層に組み合わせることでより深い学習が可能となり、圧倒的な性能を実現した。

その象徴的な出来事が2012年に開催された画像認識のコンテストだ。それまで画像の誤認識率は25%程度だったが、この年の優勝チームはAIのひとつとされているディープラーニングを活用したことで16.4%と大幅に改善した。その後、誤認識率は年々改善し、2015年には人間が画像を認識する能力をコンピューターが初めて上回った。

同じ年に発表された「Googleの猫」も世界に衝撃を与えた。YouTubeの中から1千万枚の画像を無作為に取り出し、AIに学習させたところ、猫が写っている画像を見分けることができた。

ディープラーニングはその時に彗星のように現れた技術ではなく、発想は60年ほど前から生まれていたとされている。しかし計算量が大量であったために、ハードウェアの性能が追い付いていなかった。2012年ごろからGPUを始めとした技術革新があったことで、高速な計算が可能になった。

今やAIによる画像認識を取り入れた画像解析サービスが数多く登場し、身近なものにAIが活用されるようになった。次章からはAI画像解析の活用方法について紹介しよう。


AI画像解析の活用例~小売業編~



Amazonを始めとしたECサイトの躍進により、小売業は大きな打撃を受けた。ECサイトは、もともとデジタル企業であることから、利用者の行動データを分析してマーケティングを行っている。それに対して実店舗を持つ小売業は利益率が低いことから、DXに対しての投資が遅れているのが現状だ。

しかし、AIのシステムが比較的低コストで構築できるようになったことから、小売業でも活用が進んでいる。作業の効率化だけでなく、来店者に便利で楽しい買い物体験を提供するためにAIを導入し、店舗としての価値を高める取り組みを始めている。

小売業でAIの画像解析はどのように活用されているのか、事例をご紹介しよう。

商品の自動識別でレジ待ちの解消


「レジ待ち」の解消は、小売店舗では重要な課題だ。特にパン屋では、焼き立てのパンにバーコードをつけられないため、商品一つひとつの値段をレジ担当者が覚える必要があり、教育にも時間がかかっていた。

ブレイン社の「BakeryScan(ベーカリースキャン)」は、画像認識とセルフレジを組み合わせたソリューションだ。画像認識で料金の合計を高速に計算し、来店客がセルフレジ料金の支払いをしている間に、パンを袋に入れる作業ができる。多くのベーカリーに導入されており、レジ待ち時間やレジ担当者への教育期間が大幅に短縮した。

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店舗の無人化


コンビニエンスストアなど営業時間が長い店舗では、慢性的な人手不足に悩まされており、オーナーの長時間労働や過労につながっている。

店舗の無人化はこうした問題を解決するひとつの選択肢になるだろう。高輪ゲートウェイ駅構内やファミリーマートの一部店舗では、TOUCH TO GO社が開発した無人決済システムを活用した店舗がオープンした。天井に設置されたカメラと商品棚の秤センサーを組み合わせて、来店客が商品を手に取ると、その商品を識別し、来店客の行動を追跡する。来店客はレジを通らず、交通系ICカードをかざすだけで買い物ができる。

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リアル店舗のデジタルマーケティング


ECサイトと異なり、リアルの店舗では来店客の行動データを取得することが難しく、顧客理解をもとにした売り場づくりができていなかった。しかし今後は、リアルの店舗でもデジタルマーケティングを実施し、より魅力ある店舗づくりと売上の最大化を図る時代になるだろう。

オプティム社の「OPTiM AI Camera Enterprise」は、店内に設置されたネットワークカメラで撮影した画像をAIが分析するソリューションだ。来店客の年代や性別を認識し、来店客が商品の前で滞在した時間なども割り出すことができる。こうしたデータをもとに売り場づくりを行うとともに、製品開発やマーケティングに役立ててもらうこともできる。

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AI画像解析の活用例~製造業編~



製造業においては、海外との激しい競争にさらされており、品質への要求も厳しくなっている。また、熟練工の高齢化が進み、技術伝承や人材育成も大きな課題となっている。

1950年代からオートメーション化に取り組み、先進的な設備に投資してきた製造業だが、今後は、スマートファクトリー化の流れの中で、人間が行っている単純作業を徹底的にテクノロジーに置き換えていくことが求められている。

検品作業を自動化


部品や製品が規定値に達しているかを確認する外観検査では、依然として目視で行われていることも多い。確認項目数や疲労度によりヒューマンエラーが発生しやすくなる。さらにどのくらい不良が出ているかといった可視化もしにくい。

パトスロゴス社の「DEEPS」は、AI画像解析を使った外観検査システムだ。簡単な画面操作でミクロン単位の欠陥まで検知することができる。検査モデルはAIやITの知識がなくても作成可能だ。ある企業では、毎年発売される新製品の検査モデルを従業員が作成している。

熟練者の作業プロセスを分析


長年の経験から蓄積された技術を伝承していくことは難しい。熟練者が育成に時間をとられることで、生産性が低下するという問題もある。

パソナテック社では、熟練者の技術をAIで解析して学習者の学習素材にするソリューションを提供している。まず、熟練者と学習者がそれぞれ同じ作業を行い、動画で撮影する。AIが作業手番を抽出し、それぞれの映像を比較することで、学習者が熟練者と違う動きをしている作業や必要以上に時間をかけている作業を洗い出すことができる。導入した企業では熟練者が毎回行っていた育成のための工数が大幅に削減できた。

従業員の安全管理


業務経験の少ない若手の作業者が増えており、不注意による事故につながることもある。特に食品業界では、異物混入や悪意の薬物混入が大きな問題となっており、なお一層のモラル向上が求められている。

ブローダービズ社の「AI映像解析による労働環境見守りシステム」は、定点カメラから立ち位置、作業姿勢などを解析して異常を検知する。体調不良や転倒の危険などの異常の発見や、自動化のための事前調査などにも活用が可能だ。


AI画像解析の活用例~農業編~



政府は農業の産業化を推進しており、輸出額や農業所得は上昇傾向にある。また新規就農者も増加傾向にあるなど、産業化は着実に進展している。

一方で、高齢化が進んだことや、キツい・汚い・危険という3Kのイメージが根強くあることにより、担い手の確保は依然として深刻な問題となっている。今後は少ない人数でより広い農地に対応しなければならなくなるだろう。省力化と高収益化により、このような問題を解決し、稼げる農業の実現を目指す必要がある。

低農薬農法の実現


農薬は、コストの面からも食の安全の面からも最低限の使用が望ましい。しかし従来の低農薬農法は、農家の労力や収穫の面でハードルが高かった。

オプティム社の「ピンポイント農薬散布・施肥テクノロジー」ではドローンで空撮した画像をAIが解析することで、病害虫が発生している箇所を特定し、ピンポイントで農薬を塗布できる。実際に農薬量を99%、労力を30%程度削減できた例もある。

雑草の判別


「雑草は小さいうちに抜け」という言葉があるように、農家にとって雑草の早期発見、早期除草は重要な課題だ。

日本農薬社の「レイミーのAI病害虫雑草診断」では、スマートフォンで農作物に被害を及ぼす病害虫・雑草をAI診断し、防除に適した薬剤を紹介してくれる。多雨・多湿のときに発生しやすく、多大な被害をもたらす「いもち病」の発生予測機能も備えている。

自動収穫


収穫は農家にとって重い負担でもある。お米やじゃがいもは従来からロボットで収穫ができているが、出荷基準を満たすものだけ収穫するアスパラガスやいちごなどは機械化が困難だった。

inaho社の「自動野菜収穫ロボット」は、ロボットが白いラインに沿って走行し、出荷基準を満たした作物だけを自動で収穫する。今後は多くの農家が稼働することで、生産予測や病害虫の早期発見が期待できる。


ハードルが低くなっているAI画像解析、今こそ始めよう


今までAIが導入されてこなかったのは、コストやAI導入に対する労力の問題が大きかった。しかし、最近では安価に簡単に利用できるサービスも数多く登場している。また、収穫量に応じた使用料を支払うといった料金モデルにより、コスト負担を軽くするソリューションもある。

AIを使いこなす時代、難しいという先入観を捨て、活用してみてはいかがだろうか。


3-5:人工知能と機械学習 - 総務省[PDF]
導入事例 | DEEPS 外観検査AI パトスロゴス
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WRITTEN by

山際 貴子

システムエンジニアとして独立系SI会社等4社を経験し、プロジェクトリーダーとして大規模プロジェクトの開発に携わる。その後、フリーライターとして独立。企業取材、インタビュー、コラム執筆等を中心に活動している。独自の視点から複雑な事象をわかりやすく解説することを得意とする。

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