導入事例

No.1 AI Technologyへ、LINEが推進するAI投資の今と未来【NVIDIA AI DAYSレポート】

山田 雄一朗 2021.7.15
スマートフォンを持っているほとんどの人が使っているであろうLINE。コミュニケーションアプリとして、テキストやスタンプ、ビデオ通話までさまざまな形でユーザー同士が交流できる。

LINEといえばこのようなBtoC向けのサービスを提供しているイメージが強いが、実はBtoB向けのサービス開発にも注力している。特に、AI技術を駆使したサービスは、大手企業でもすでに利用されている。

今回ご紹介するのは2021年6月17日の「NVIDIA AI DAYS」で行われたセッション「『これからのあたりまえ』を作り出すLINEのAIサービス『LINE CLOVA』」の内容である。スピーカーのLINE株式会社 AIカンパニー カンパニーエグゼクティブ COO AI事業企画室 室長・和波 豊氏から、私たちがまだまだ知らないLINEの姿が明かされた。

「No.1 AI Technology」を目指すLINE


まずは、和波氏よりコミュニケーションアプリ「LINE」について紹介があった。

スマートフォンを持っている人なら、ほぼ全ての人が使ったことがあるLINEは、国内のMAU8.800万人を誇る国内最大級のコミュニケーションプラットフォームだ。これは、日本の人口のおよそ7割近くを占め、LINEはもはやスマートフォンユーザーのインフラになっていると言っても過言ではない。

また日本を含め、世界230以上の国や地域で利用され、場所や通信キャリアにとらわれず無料で音声やビデオ通話、チャットができるのも魅力の1つである。


そして、LINEはAIの開発にも力を入れている。「ひとにやさしいAI」をミッションに掲げ、AIを媒介にビジネスと人の距離を縮めることを目指している。

LINEが持つ自然言語処理、文字や画像、顔や音声の認識から音声合成など、さまざまな要素技術を駆使して、消費者だけでなく、ビジネスパーソンにとっても身近な存在になろうとしているのだ。


LINEのAIテクノロジーの象徴の1つであるプロダクトが「LINE CLOVA」だ。2017年にリリースしたLINE CLOVAは、順調にユーザー数を伸ばしているという。

さらに、LINEとNAVERは、LINE CLOVAという名称を「LINEが持つAI技術の総称」として使うまでになった。競争が激しいグローバル市場へ飛び込み、「No.1 AI Technology」を目指すという。


その中で、CLOVAのB2B提供プロダクトについて、和波氏から紹介があった。チャットボットや音声認識、音声合成などさまざまなプロダクトが用意されている。そして、これらを組み合わせることで、ビジネス現場におけるAI利用を強力に後押しできるようになる。


強みは「日本語に特化したAI開発」


ここで、和波氏はLINEのAI開発における“ある強み”を挙げた。それが「日本語に特化したAIを開発できること」である。AIの精度を高めるため、大量のデータが必要となるのは周知のとおり。本来であれば、AIの学習データに用いる大量の日本語の文章や音声を収集するのは困難である。

しかし、LINEであればすでに大量の日本語に関するデータを保有している。これをAI開発に活用して、より良いサービスの提供につなげようとしているのだ。そして、この技術力は世界レベルでも高い水準であり、論文などの採録の事例も増えているという。


講演では、LINEの音声認識と自然言語処理を活用したある事例が紹介された。それは、4人の会話をAIが音声認識して、ほぼリアルタイムで自然言語処理によって書き起こされるというものだ。

注目すべきは、やはりその精度である。書き起こされた文章を見ても、不自然な点がほとんどない。この精度であれば、企業のミーティングの議事録作成もかなりの部分で自動化が実現できるだろう。

そして、もう1つ紹介されたのが「音声合成」である。通常の音声合成では、どこか機械的な声になってしまうが、LINEのCLOVA Voiceはこのような感じがほとんどない。人間が長時間聞いたとしても違和感を覚えずに、ストレスなくやり取りができそうだ。

また文字認識においても、世界最高水準のAI-OCRの開発に成功しているという。手書き文字の認識率も高く、ビジネス現場では帳票の読み取りなどに活用して、業務の生産性向上が期待できる。


このOCRはすでにSAP Councur Japanや博報堂DYメディアパートナーズなどの企業で、すでに利用実績を有している。今後、さらなるシェア拡大が見込まれる。

「AIコールセンター」は、実用の域に達している


さらに、和波氏はLINEが持つ要素技術を組み合わせて、すでにソリューションとして大手企業などに活用されている事例を紹介する。


その1つが「LINE AiCall」だ。LINE AiCallは、LINEが磨きをかけた音声認識と音声合成の技術を組み合わせた音声対応AIサービスだ。

そして、これが実際に利用されるシーンの1つに「コールセンター業務」がある。読者の方も経験があると思うが、コールセンターに問い合わせをしても、なかなかつながらずに長時間待たされるか、もしくはかけ直しを余儀なくされるといったことは多々ある。オペレーターの対応が追いつかず、このような事態が発生すると、ネガティブなユーザー体験が残ってしまう。

そのため、コールセンターにおけるAIの活用は、非常にニーズが大きいといえる。そして、公演中に流れたデモを見る限り、基本的な応対はほぼ問題なくこなしていた。

さらにLINEだからこそ提供できるのが、電話応対だけでなく、コミュニケーションアプリのLINEと連携して、通話後に自動メッセージの送信ができることが挙げられる。これにより、電話というアナログなタッチポイントから、デジタル技術を用いてより顧客と密なコミュニケーションが可能になる。


すでにLINE AiCallは、ヤマト運輸や飲食店向けの予約管理システムを手がけるエビソルなどで導入されているという。実際の現場でも、すでに積極的に利用されており、労働人口の減少が叫ばれる日本において今後ますます存在感を増すだろう。

その他にも、LINEは画像認識技術を活用して「LINE eKYC」を提供している。法改正の影響もあり、今後は金融機関を中心に普及することが予想される。このようなサービスによって「なりすまし」のような事態を防ぐだけでなく、ユーザー体験がよりスマートになるだろう。

LINEは今後もAIへの投資を積極的に進めていくそうだ。すでにNAVERと共同で日本語に特化した超巨大言語モデルの開発に着手している。私たちにとって身近なツールは、AIとの接点を創造し、生活をより豊かにしてくれるだろう。今後の動向に注目したい。


LINE
https://line.me/ja/

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WRITTEN by

山田 雄一朗

大学院で経営工学の修士号を取得した後、IT企業の営業としてキャリアを歩む。その後、経済メディア「NewsPicks」にて記事の執筆から動画配信など幅広い業務に従事して独立。ビジネスや最先端テクノロジーなどを踏まえた「XTech(クロステック)」の記事制作に強みを持つ。

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