導入事例

日立ハイテクソリューションズが伝授する「本当に使えるAIの創り方」【NVIDIA AI DAYSレポート】

山田 雄一朗 2021.7.16
現在、多くの企業で開発が進むAI関連のソリューション。しかし、その開発は決して一筋縄ではいかない。数多くの困難に直面しながら、それを乗り越えてローンチに至る。

2021年6月17日に開催された「NVIDIA AI DAYS」で、株式会社日立ハイテクソリューションズ ICT事業統括本部 設計本部 ソフトウェアエンジニアリングセンター システム設計グループ システムエンジニア 長谷川 紀子 氏が「AI開発の過程で直面する課題をどう克服したか~NVIDIA GTC採用の弊社AI開発担当が体験を伝授~」と題して講演を行った。

今回の講演を通じて知った「実際に『使えるAI』が誕生するまで、どのように課題を克服してきたか」という過程をお伝えしたい。

リハビリの推奨プランを、AIが医師やセラピストに助言


冒頭、長谷川氏より日立ハイテクソリューションズの紹介があった。

世界中のあらゆる製造業支えるため、高い技術力を活かしてITサービスを半世紀にもわたり提供し続けている日立ハイテクソリューションズは、近年AIの活用にも積極的に取り組んでいる。DXが声高に叫ばれる現代において、最先端のテクノロジーで顧客の課題解決に貢献し、時代の一歩先を行っている。


日立ハイテクソリューションズが提供するAI関連のポートフォリオは以下のとおりだ。

今回は、この中でリハビリテーション病院向け支援システム「awina」、化学分野向けマテリアルズインフォマティクスシステム「Chemicals Informatics」に関する事例が紹介された。


まずリハビリテーション病院向け支援システム「awina」について。これはリハビリが必要な患者の推奨リハビリテーションプランを提示するソリューションである。

業界トップクラスのリハビリテーション病院の過去10年分の電子カルテデータを学習して、およそ7秒でプランを提示できるという。これにより、経験の浅い医師でもベテラン医師と同等の診断が可能となり、診療報酬の改定により効率的なリハビリが必要不可欠な病院経営にも貢献できる。


しかし、これを実現するために、さまざまな壁に直面してきたという。その1つが「予測精度」だ。当初は、相関係数が0.3程度で実際の結果から大きくかけ離れた状況だった。

十分なカルテデータを解析したにもかかわらず、なぜこのような結果になってしまったのか。その原因は患者の回復傾向を、以下の「典型的回復」しかAIのモデルに組み込んでいなかったためだという。回復の仕方は患者により異なり、「大回復」や「突然の急回復」などのパターンもある。


回復の傾向を複数モデルに組み込んでから、精度は劇的に向上した。相関係数は0.8以上となり、精度は医師やセラピストに助言ができるレベルに達した。

これらの経験から「AIの精度向上は医師やスタッフが蓄積してきたノウハウが欠かせない」と長谷川氏は語る。テクノロジーだけではなく、人間が培ってきた知恵をどうAIに反映させるか。これは、AI開発を進める上で示唆に富んでいる。

一方で、当時のawinaは他にも課題を抱えていた。それは、予測を出すまでの「計算時間」だ。当初、CPUを使って計算していたものの42秒もかかっていたという。「これでは遅くて使えない」。現場からは厳しい意見が飛んだ。

しかし、NVIDIAのTesla T4を導入したところ計算時間は7秒まで短縮。実用に耐えうるスピードになり、顧客から高い評価を得た。

従来比1,000倍。有望な材料・素材を、AIを用いて高確率で発見する


もう1つの事例が、化学分野向けマテリアルズインフォマティクスシステム「Chemicals Informatics」である。これは、より付加価値が高い最先端の材料・素材をいち早く発見して市場投入を実現するためのソリューションだ。化学メーカーも新興国のメーカーの参入やM&Aなどによりグローバル企業の巨大化など競争の激化にさらされている。さらに、熟練の開発者不足により開発期間に影響が出ていた。


これらの課題を解決する切り札として、AIを活用したChemicals Informaticsが開発された。

その成果は目覚ましく、従来有用な化合物が発見される可能性は10万分の1だったのにも関わらず、Chemicals Informaticsを利用することで1%まで挙がったという。およそ1000倍も可能性が高まったことで、従来以上に新製品開発の頻度が増加して、売上増にも貢献できる可能性もある。


Chemicals Informaticsは、主に3種類のAIで構成されている。公開データを処理する「NLP(自然言語処理)AI」、有望な新規化合物を生成する「新規化合物AI」、そして掛け合わせ検索手法を用いた「探索AI」だ。これらを組み合わせ、さらに用途や形状に応じた特性値の違いを考慮することで「高精度な予測結果を導き出せる」(長谷川氏)という。

さらにセキュリティ対策にも力を入れている。GPUサーバーへアクセスをするために、SSL-VPNを用いているのだ。これにより、データの流出などのリスクを大幅に低下させられる。


実課題の解決から誕生したAIソリューション


このようなAIを用いて実際の課題を解決してきた経験は、日立ハイテクソリューションズの現在の製品群に反映されている。例えば、「AI Modeler」はAIモデル作成の自動化を実現。従来、数カ月単位でかかっていた開発工数がわずか数分〜数時間で済むという。AI人材が不足し、2025年までにおよそ8.8万人が不足するといわれている現代において、このようなソリューションが活用される余地は十分にあるだろう。


またGPUクラウドサービス「ayamo for AI」は計算負荷が大きいAIの処理速度向上に大きく貢献している。国内データセンターでセキュリティも完備され、レンタル期間も柔軟に対応。さらにサーバーOSやミドルウェアの設定も不要ですぐに利用できる。

日立ハイテクソリューションズはワンストップでAI導入を実現している。しかし、この背景には、顧客が抱える課題と向き合い続けてきた過去がある。真のDXを実現するソリューションは、このようなプロセスを経て誕生する。今回の講演を聴いて、そう感じずにはいられなかった。


株式会社 日立ハイテクソリューションズ
https://www.hitachi-hightech.com/hsl/

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WRITTEN by

山田 雄一朗

大学院で経営工学の修士号を取得した後、IT企業の営業としてキャリアを歩む。その後、経済メディア「NewsPicks」にて記事の執筆から動画配信など幅広い業務に従事して独立。ビジネスや最先端テクノロジーなどを踏まえた「XTech(クロステック)」の記事制作に強みを持つ。

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