導入事例

コロナ禍で迫られるDXの加速、そもそもDXとは?

AI Start Lab 編集部 2021.7.26

浮き彫りになったデジタル化の必要性


新型コロナウイルスの感染拡大で、企業を取り巻く環境は急激に不安定になっている。そんな中、浮き彫りになったのが、早急なデジタル化の必要性だ。

リモートワークへの移行、オンラインでの顧客との接点の強化、サイバーセキュリティへの対応……。こうしたデジタル技術を活用した変革を、「DX(デジタル・トランスフォーメーション=Digital Transformation」と呼ぶ。


DXの出発点は、スウェーデンの情報学者エリック・ストルターマン氏が2004年に提唱した「ITの社会への浸透で生活をよりよい方向に変化させる」という概念である。2018年に経済産業省が「DXレポート」を公表したことで、日本でも広く使われるようになった。

なぜいま、DXが注目されているのか


それではなぜ、20年近く前に提唱された概念がいま、注目を集めているのか。

一つは、多くの企業が「これまでと同じ事業や戦略では生き残れない」という危機感を持ち始めたことが理由として挙げられる。デジタル化の進展で地域・国境を超えた競争が激化し、顧客の価値観が変わり、その多様化も進んでいる。

デジタル技術を駆使した革新的なビジネスモデルを展開する新規参入者が、あらゆる産業でゲームチェンジ(局面の転換)を起こしていることも、大きな要因となっている。

たとえばインターネット通販(EC)。Amazonの急成長で、リアル店舗に依存する百貨店や総合スーパーが苦境に立たされている。

モノや権利を共有する「シェアリング・エコノミー」も台頭した。民泊仲介のAirbnbやタクシー配車のUberは、既存のホテル業界・タクシー業界にとって大きな脅威とされている。

「サブスクリプション」と呼ばれる定額制のビジネスモデルも浸透した。音楽配信のSpotifyや動画配信のNetflixは、いまでは日本でも定番の配信サービスであるということは、多くの人が知っているだろう。

こうした「ディスラプター(破壊者)」によって既存の産業の枠組みが次々と壊される中で、多くの企業はDXでビジネスモデルを大胆に変革させる必要性が出てきている。

世界におくれを取る日本のDX


ところが、残念ながら日本企業のDXは海外にくらべて遅れていると言われている。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施した調査によると、2020年10月時点でじつに9割以上の企業がDXにまったく取り組めていないか、ようやく取り組み始めた段階にあるという。DXに十分に取り組めている企業は1割に満たないのが実状だ。


スイス・ローザンヌを拠点とするビジネススクール、国際経営開発研究所(IMD)が発表した2020年の「デジタル競争力ランキング」では、日本は27位。前年の23位から4つも順位を下げた。

もし今後、日本でDXが進まなければ、既存のITシステムの複雑化・老朽化・ブラックボックス化が国際競争への遅れや経済の停滞をもたらし、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある――。経済産業省は「DXレポート」で「2025年の崖」と名付け、こう強く警告している。

「とりあえずのIT化」はダメ。DXの本質は「変革」にある


では、実際にDXに取り組もうと思ったら何をすればいいのか。陥りがちなのが、「とりあえずのIT化」をして満足してしまうことだ。「IT化」と「DX」はイコールではない。「IT化」が特定の業務の効率化を主目的とするのに対して、DXは全社にわたる戦略的な取り組みといえる。

AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といったデジタル技術の進展は、DXの大きな推進力となる。だが、こうした先進テクノロジーを導入して既存の業務を効率化しただけでは、DXを実現したとはいえない。重要なのは、「D=デジタル」よりも、「X=変革」すること。デジタル技術は「目的」ではなく、あくまでも「手段」なのである。

DXの対象は内部(社内)向けのものと外部(顧客)向けのものがある。内部向けのDXは組織運営や意思決定方法の変革、業務の自動化・不要化、外部向けのDXはビジネスモデルの転換や新規事業への進出、新たな顧客価値の創出などだ。

こうした業務・ビジネスの「変革」を、デジタル技術をフル活用して進めるのがDXの本質である。企業が優位性を確立するには、変化する顧客・社会の課題をつねにとらえて、素早く変革し続ける能力を身につけることが重要だ。既存の枠組みにとらわれない、新たな着眼点も欠かせない。

どんな企業であってもDXは「他人事」ではない


DXが必要なのは大企業だけではない。中小企業も、時代に合わせて変革し続けなくてはならない。

中小企業は大企業にくらべてデジタル技術に精通した人材が少ないため、DXの遅れが指摘されている。「DXはすぐには必要ない」と二の足を踏む中小企業もあるようだが、規模が小さくても、デジタル技術で実現できることはたくさんある。

どのような業界であっても、DXは無関係ではいられない。製造業小売業も、農業もサービス業も、教育産業も医療産業も、時代に合わせてデジタル技術でビジネスを変革することが求められている。

DXで重要なのは、社外との連携を軸にすることだ。革新的なビジネスモデルを創造するには、開発において自社の経営資源の枠にとらわれてはならない。DXには莫大な予算がかかる。だからこそ、経営トップの決断力が不可欠なのだ。

新型コロナウイルスの影響によって事業継続の危機に立たされた企業が多い中、旧態依然とした企業文化や商習慣、決済プロセスなどの変革に踏み込めた企業と、踏み込めなかった企業の差が明確になってきている。DXの遅れは致命的な経営リスクとなる。今後のデジタル競争に生きるためにも、スピード感を持ってDXに取り組む必要があるだろう。

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AI Start Lab 編集部

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