導入事例

画像解析で宿泊客に混雑状況をリアルタイムで提供 ホテル施設にも導入可能なクラウド型監視カメラ「ギガらくカメラ」【事例取材】

AI Start Lab 編集部 2021.12.16
新型コロナウイルスの流行によって宿泊需要が落ち込み、大きな打撃を受けたホテル業界。

こうしたなか、緊急事態宣言やGo Toトラベルなどの政策によって、ホテル業界は2020年から現在にかけてさまざまな形で新型コロナの対応に追われた。

名古屋を代表するホテルのひとつである、名古屋マリオットアソシアホテルでは、コロナ対策のひとつとして、NTT東日本の提供するクラウド型防犯カメラサービス「ギガらくカメラ」とオプション機能の「PLACE AI」を導入したという。後者は株式会社オプティムによる「OPTiM AI Camera」の技術が活用されており、施設の混雑状況をリアルタイムで伝える画像解析AIサービスとして提供されている。

“密”を回避するため、「ギガらくカメラ」が名古屋有数のホテルでどのような活用をされているのか、株式会社ジェイアール東海ホテルズ企画部施設課長の猪飼 誠(いかい まこと)氏に伺った。

人が集まる施設の混雑状況を1分ごとに画像分析して表示し、“密”を回避


「ギガらくカメラ」は、監視カメラ映像をいつでもどこでもインターネット経由で確認でき、クラウド上に高画質な録画映像を保存できるサービスだ。オプション機能の「PLACE AI」を利用すれば、施設の混雑状況を1分ごとに画像解析して表示することが可能となる。ホテル側の管理画面では、人物は水色のシルエットでのみ確認でき、個人情報は保護される。「PLACE AI」は、管理画面で画像を確認して混雑状況をリアルタイムで把握でき、混雑時に管理者がメールでアラートを受け取ることもできる。Webサイトに2~3段階で混雑状況を表示することや曜日・時間帯の混雑傾向を表示することも可能だ。

名古屋マリオットアソシアホテルでは、利用時間帯の集中が予想される15階のフロントと朝食会場のレストラン、コンシェルジュラウンジ、18階のジムとプール、そして36階のエリートメンバーラウンジで混雑状況を取得。全部で14台の監視カメラが「ギガらくカメラ」として稼働している。


ホテルの広いダイニング空間もカメラが全体を把握して利用客の人数を検知することができる

当初、映像解析オプションの「PLACE AI」はコンビニや飲食店などさほど広くない空間での利用を想定していたため、ホテルのような大人数を収容できる施設への導入はハードルが高かった。しかし、2021年6月頃に機能を改善。感知できる距離が広がったことで、名古屋マリオットアソシアホテルでの導入も実現したという。

「PLACE AI」は機能追加によって、群衆が発生するようなイベント会場や大通りといった場面では、検知距離が長いモード、コンビニや小規模な飲食店などでは検知距離が短いモードといったように、カメラ設置場所の状況に合わせて画像解析のモードを選択できるようになっている。

既存の監視カメラをそのまま活用できる導入ハードルの低さが採用の決め手


「名古屋マリオットアソシアホテルが『ギガらくカメラ』の導入を検討するきっかけになったのは、2020年7月からスタートしたGo Toトラベルキャンペーンでした」

そう語るのは、企画部施設課長の猪飼氏。ホテルの施設管理全般を担当されており、今回「ギガらくカメラ」の導入に尽力した人物だ。

猪飼氏は、導入の経緯についてこう語る。

「Go Toトラベルによって、お客様が数多くご来館されました。通常よりもお得に泊まっていただけるということで、専用ラウンジを利用できる宿泊プランへのお申し込みも増加。入場制限や予約制度が必要なほど、専用ラウンジが混雑し、多くのお客様にお待ちいただくなどご迷惑をおかけしてしまいました」

Go Toトラベルの反響は大きく、ホテルの大切にするホスピタリティが十分発揮できない状況が生まれてしまった。そこで猪飼氏が検討したのが、お客様が客室からラウンジなどの混雑状況を把握できるようなサービスだった。導入にあたっては、NTT東日本以外に2社のベンダーと比較検討。そのなかで最終的に「ギガらくカメラ」を選んだ一番の決め手は、設備投資に対するハードルの低さだったという。

「他社ではサービス導入にあたってどうしても新しくカメラを設置することが必要でしたが、『ギガらくカメラ』なら、『ONVIF』*に準拠した製品であれば、既存の監視カメラをそのまま使えるということで、工事費が不要でした。さらに、検討中にアップデートがあり、新たにホームページに混雑状況が掲載できるようになったのが最後のひと押しとなって、導入を決めました」

株式会社ジェイアール東海ホテルズ企画部施設課長の猪飼誠氏

規格が合う既存のカメラでは、カメラゲートウェイを設置することで、「ギガらくカメラ」を利用することができる。ホテルという広い施設では必要なカメラ台数も多くなることが予想され、さらに営業中の工事が難しい箇所があることも考えられる。工事不要は大きな魅力だったに違いない。

クラウド型サービスを利用するにあたっては、セキュリティ面や個人情報の取り扱いの部分で社内稟議を通す苦労もあったという。しかし、扱うデータの内容などの諸条件を丁寧に擦り合わせていき、最終的に2021年6月からカメラは本格稼働し、現在に至る。

「ギガらくカメラ」はクラウドサービスでありながら、十分なセキュリティ対策が行われているために、ホテルのようなプライバシーが特に重視される施設でも導入が可能となった。また「PLACE AI」の画像解析では、撮影画像は瞬時に破棄され、人を検知したデータのみを利用するため、万が一不具合があっても撮影画像が公開されてしまう心配がないという。

*ONVIF:ネットワークカメラ製品インターフェースの規格標準化フォーラムで定められた規格。「ギガらくカメラ」を利用できるのは「ONVIF プロファイルS」に準拠し、映像コーデックがH.264、音声コーデックがAAC-LCのもの。

お客様による利用だけではなく、いずれは従業員の配置にも活用できる可能性


「PLACE AI」によって取得した混雑状況は、名古屋マリオットアソシアホテルの公式ホームページからも確認できる。

名古屋マリオットアソシアホテルの公式ホームページでは、このように混雑状況がリアルタイムで表示されている

表示する混雑状況は「混雑していません」「やや混雑しています」「混雑しています」の3段階。各段階の閾値(しきいち)は管理者が設定可能で、現在、名古屋マリオットアソシアホテルでは施設の収容人数に対して6~7割程度の密度になったら、「混雑しています」と表示されるようにしている。

宿泊客はホテルから配られるカードや、客室のタブレットに掲載のQRコードを読み込むことで、自分のスマホからいつでも各施設の混雑状況をチェック可能だ。宿泊客や従業員からは「すごい」「便利になった」という声が上がっているという。

タブレットはすべての客室に配備されている

混雑状況の閾値は、フロントスタッフが専任で管理。現在は日によって微調整をして、最適な値を探っている最中だという。ときには従業員が自ら混雑状況を確認して「混雑しています」となっている施設にヘルプを出すこともあり、今後混雑状況を細かにデータ化すれば、スタッフのアサインという切り口でさらなる活用の芽があるのではと猪飼氏は見ている。

従業員はデスクからも管理画面や混雑状況を確認できる

機械にできることは機械に任せ、人間は人間の仕事に集中する時代へ


コロナの影響によって多くのサービス業が施設のあり方を問われている。ホテルにおける監視カメラとAIを活用した混雑対策も、「すでに当たり前のことになっている」と猪飼氏。今後の「ギガらくカメラ」やテクノロジーの活用について、猪飼氏は次のように続ける。

「混雑状況のデータをもとに一日の混雑の傾向値を算出し、お客様にご利用いただきやすい時間帯をもっとしっかりお伝えできるようにしたいです。また、ジェイアール東海ホテルズが有するほかのホテルでも、駐車場や朝食会場に『ギガらくカメラ』と『PLACE AI』を導入したいというニーズがあります。当ホテルでの事例が、ほかのホテルの導入ハードルを下げることにつながればいいですね。人間ができることは人間に、機械でもいいことは機械に任せて、さらなる効率化を図っていきたいと考えています」

取材の中で猪飼氏はホテル業界について「今後はホテルに滞在中の付加価値をいかに高められるか、いかに憧れをもってお客様に来ていただけるかにかかっています」と話してくれた。新型コロナが収束しても、ホテルの価値、あり方は大きな変革を迎えそうだ。

こうした時代に「ギガらくカメラ」は、サービス業に新しい価値を生み出すためのツールのひとつとして、事業者の助けになっていくことだろう。


ギガらくカメラ サービスサイト
https://business.ntt-east.co.jp/service/gigarakucamera/

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WRITTEN by

AI Start Lab 編集部

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