導入事例

空港にも導入された「3密可視化システム」とは? 開発したウフルに聞いた

AI Start Lab 編集部 2021.1.27
CONTENTS
  1. 密閉・密接・密集の3条件を数値化し、注意を促す「3密可視化システム」
  2. いち早く南紀白浜空港で導入、地域全体の意識向上に貢献
  3. スポーツジムから公共交通機関まで、幅広い業界がシステムに関心を寄せる
新型コロナウイルスの感染拡大により、人々は漠然とした不安を抱えながら日常生活を送っている。クラウドを使ったシステム開発などを行う株式会社ウフルは、コロナ禍における行動の不安を少しでも解消すべく、空間の3密状態が可視化できるシステム「3密可視化システム」を開発。2020年5月より事業者向けに提供を開始した。

「3密可視化システム」とはどのようなサービスで、それを使うことによってどんな効果が期待できるのか。ウフル enebular Planning 部長 青木隆雄さんには概要を、事業者へのサービス導入の事例についてはBusiness Development 那須一徳さんにお伺いした。

密閉・密接・密集の3条件を数値化し、注意を促す「3密可視化システム」


「3密可視化システム」を簡単に説明すると、「新型コロナウイルスのクラスター発生リスクを見える化するサービス」のこと。具体的には、「密閉・密接・密集」のそれぞれの要素について適切な指標を用いて数値化し、その場における感染リスクを視覚的に捉えられるようにする。


まず「密閉」については、二酸化炭素濃度を指標に設定。換気されていない状態の空間に人が集まると二酸化炭素濃度が上がることから、同システムでは揮発性ガスの濃度から二酸化炭素濃度を算出できるVOCセンサーを利用。それによって二酸化炭素濃度の上昇を捉え、換気目安の見える化を図った。

次に「密接」だが、飛沫拡散の抑止につなげるべく、騒音センサーで会話量や声の大きさを測定。その場が騒がしいかどうかを捉えることで密接の指標とし、会話量を抑えるよう利用客に意識の向上を促したり、事業者が利用客に注意を促したりするための目安とした。

そして「密集」については、大人数で集まることを避けるため、人数をカウントするセンサーを活用。同システムでは赤外線センサーで人数をカウントし、入室制限などの目安とした。

3密可視化システムについてご説明いただいた青木さん

「クラスターの発生リスクが高い状態の目安となる閾値(しきいち)は、空間の広さや環境などによっても異なるため、センサーを設置する場所ごとに決めます。基本的には設置前に1週間ほど試験運用し、その場所の最大値や最小値、平均値を調べたうえで、それらを参考に適切な数値に手動で設定。ただし、感染リスクの高低を数値で厳密に定めるわけではなく、換気を行うタイミングの目安やその場にいる人の意識を向上させるための指標として、空間ごとに適切な数値を決めることを重視しています」(青木さん)

これらの各センサーから集めた情報は、ゲートウェイを経由してネットワーク上にデータを収集。そのうえで、利用客向けにサイネージやwebサイトに3密状況を表示させたり、従業員向けの管理者ダッシュボードグラフや表などで表示させたりすることができる。これにより、空間や人々がどのような状態かが一目で分かるようになる。

ダッシュボードのサンプル画像

データはクラウドに蓄積され、そこからレポートの出力も可能。測定結果だけでなく、たとえば「一週間の営業時間の中で、この時間帯が最も3密度合いが高い」といった傾向を分析したレポートを取得できる機能も付いている。傾向分析を行うことで、「何曜日の何時には必ず喚起をする」などのルール化に役立てることができる。

いち早く南紀白浜空港で導入、地域全体の意識向上に貢献


ウフルが「3密可視化システム」の開発を始めたのは、緊急事態宣言が発令された4月頃。これまでも水槽の水質検査のためのセンサー開発や、工場設備におけるモーターの振動解析など、センサーデータを使ってさまざまな企業の業務改善を手伝ってきたことから、何かできることはないのかと考えたのがきっかけだった。

同様のサービスは他社からもいくつか発売されているが、ウフルのシステムはリーズナブルな価格設定が売り。小規模事業者でも導入しやすいところが特長だ。また、二酸化炭素濃度の測定や人数のカウントに特化したサービスも多いが、密閉・密接・密集のすべての要素を測定できるのは「3密可視化システム」だけだ。

システムの開発はスピード感をもって行われ、2カ月弱でリリースに至った。リリース後、すぐに和歌山県の南紀白浜空港で実証実験の開始が決定。5月中に設置が行われ、6月中旬から運用を開始した。

空港の搭乗ゲート前のサイネージでこのような表示を行なっている

南紀白浜空港では、出発ロビーの搭乗待合室に設置。サイネージで二酸化炭素濃度の推移と混雑状況の推移を表示し、利用客には密接回避の意識の向上を促すとともに、事業者には換気の目安や、利用客に密接回避の注意を促す目安としている。

南紀白浜空港への「3密可視化システム」導入を担当したウフルの那須さんは、運用の成果について次のように話す。

和歌山県白浜町にあるウフルのオフィスからお話を聞かせてくださった那須さん(左)

「空港を利用されるお客様にインタビューしたところ、お子様連れのお客様から『今いる空間が密なのかどうかを知ることができるだけでも安心できる。いろんな場所で導入して欲しい』というお声が聞かれました。また、空港には施設管理を行う株式会社南紀白浜エアポートと、お客様の対応を行う日本航空株式会社(JAL)の2つの事業者さんが存在するのですが、空間の状態が可視化されることで換気やお客様への注意のタイミングに共通の認識を持つことができ、連携を取りながら対応ができていると伺っています」(那須さん)

さらに、空港に同システムが導入されたことで、地域に思いがけない影響をもたらしたという。南紀白浜では観光事業が収益の半分を占めるが、コロナ禍で観光客が激減。地域全体が深刻な状況に追い込まれていた。しかし、空港がいち早く対策に乗り出したことで、地域の人々もそれにならって抗ウイルスコーティング加工などの感染防止対策に意欲的に取り組み、安心して観光してもらえる環境の整備が進んだ。

「空港の対応が早かったため、テレビなど多くのメディアで『3密可視化システム』の導入について取り上げていただきました。メディアを通じて南紀白浜が安心安全な場所づくりに尽力していると発信ができたこともあり、そうした面でも地域の方々に価値を感じていただけたのではないかと考えています」(那須さん)

スポーツジムから公共交通機関まで、幅広い業界がシステムに関心を寄せる



「3密可視化システム」を活かせる場所は飲食店、スーパー、映画館、学校、オフィス、会議室など枚挙にいとまがない。実際、多業種の企業からコンスタントに問い合わせがあるという。

たとえば、若者からシニアまで幅広い世代が利用するスポーツジムに導入された。もともと、同ジムではガイドラインに沿った感染防止対策を行っているものの、利用者には伝わりにくいといった課題があった。そこで、環境の見える化によって安心を感じてもらうと同時に、利用者や従業員の関心を高めることも狙った。

最近では公共交通機関からの相談もあったという。ターミナル施設の地下はもちろん、地上施設においても混雑による利用客の不安を払しょくするため、何かしらの対策が必要だという問題意識があり、「3密可視化システム」で解決できないかと考えたそうだ。

このように、企業側はしっかり対策をしているが、それをどう利用客にアピールするかという観点から相談を受けることもあるという。


今後について青木さんは、「空間を可視化することの有用性を世の中に広めていきたいと考えています」と話す。コロナ禍をきっかけに、感染症予防のためにはマスクの着用のみならず、定期的な換気、飛沫拡散の抑止が必要だという意識が高まっているのは間違いない。そうした意識の向上に応える同サービスは、今後ますます需要が高まっていくだろう。


株式会社ウフル
https://uhuru.co.jp/
3密可視化システム
https://uhuru.co.jp/solutions/3cs/

取材・文:三ツ井香菜
撮影:齋藤葵
印刷ページを表示
WRITTEN by

AI Start Lab 編集部

AI・人工知能のビジネス活用についての情報をさまざまな視点からお伝えしていきます。

AIのビジネス活用に関する
最新情報をお届け

会員登録

会員登録していただくと、最新記事やAI関連のイベント情報を受け取れたり、その他会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。