導入事例

『鬼滅』最終巻発売日の人流調査が話題に!ロケーションテックが秘めるDXの可能性

AI Start Lab 編集部 2021.1.28
匿名の位置情報ビッグデータをAIが素早く分析・視覚化する技術、いわゆるロケーションテックをもとに構築された、クラウド型プラットフォーム製品「Location AI Platform」。小売や外食、不動産など多種多様な企業で、販売促進・マーケティング・需要予測などのビジネスに活用されている。

開発を手掛けるのは、独自技術によってロケーションテックを推進するクロスロケーションズ株式会社。製品の特徴やビジネス活用の意義について、同社のプロフェッショナルサービス ディレクター濱田知行(はまだ・ともゆき)氏に聞いた。

AIが人流を解析!データの可視化でビジネス戦略が変わる。


クロスロケーションズは、「多種多様な位置情報や空間情報を意味のある形で結合・解析・視覚化し、誰でも活用できるようにすること」をミッションに掲げ、位置情報ビッグデータ解析エンジン「Location Engine™️」と、クラウド型プラットフォーム「Location AI Platform™️」の開発・提供を事業の柱にしている企業だ。

ごく簡単に説明すると、個人情報を除いた国内1000万人の移動データを収集、解析したうえで、利用者向けのダッシュボードにビジュアライズした移動データを表示させるというものだ。この移動データの出所について、濱田氏は次のように解説する。


「位置情報はスマートフォンアプリの企業から提供していただいています。氏名などの個人情報は省き、緯度・経度・時間のデータのみ利用しています。アプリは年齢や性別などの偏りがないように、エンタメや便利ツールなど、あらゆるカテゴリに分散しています」(濱田氏)

個人の移動をトレースするのではなく、エリアデータとして収集。時間ごとに移動を追えるため、昼夜問わず、人の動きのパターンを掴むことができるというわけだ。

「たとえば、携帯キャリアの企業も、位置情報を収集するサービスを展開しています。ただ、その位置情報というのは『恵比寿駅周辺、15時に男性が何人いる』というように、特定のエリアと時間を切り取ったデータのみです。かたや我々が集めているのは、『恵比寿駅周辺にいる人は、どこから来て、どこに帰っていくのか、よく利用するスポットはどこか』を把握できる人流のデータになります」(濱田氏)


2020年12月4日、社会現象を巻き起こした『鬼滅の刃』の最終巻発売にあわせ、同社ではプロモーションも兼ねて、東京23区、名古屋市内、大阪市内の書店への人流を調査。時間帯の来訪数を発表し、前月を上回ったという報告を発表して注目された。

このように、地域や時間帯を絞り、どのように人が動いているのかを把握することで、企業のマーケティングや広告戦略、店舗の立地検討に役立てることができるという。


「ロケーションテックは、広告戦略に端を発し、マーケティングへと活用範囲を広げてきました。しかし、位置情報のローデータをそのままビジネスに活用するには、処理や加工が必要です。その役割を担うのがデータサイエンティストですが、すべての企業に在籍しているわけではありません。そこで、当社ではまずビッグデータ解析エンジン『Location Engine』で位置情報を“使えるデータ”に加工。そのうえで、利用者が分かりやすいグラフィックを『Location AI Platform』に表示させています」(濱田氏)

データに基づいた仮説で確度の高い販促や商品戦略を実現


では、具体的にどのように「Location AI Platform」をビジネスに活用しているのだろう。濱田氏は百貨店の事例をもとに、次のように説明する。

「ECが台頭する昨今、百貨店はリアルの場に何が求められているのか、どのような顧客体験を創造するべきかを常に考えています。そこで、『Location AI Platform』で自社店舗だけではなく、競合店舗への人流をモニタリングして、イベントやセールなどの反響を推測したり、来店客がどの路線を使っているか、どのあたりに住んでいるか、よく利用している場所はどこにあるのか、平日と休日、時間帯で利用傾向の違いはないか、コロナ禍でどのように顧客行動が変化しているのかも、移動データから読み取れますので、販促プロモーションの見直しや商品戦略に役立てていただいています」(濱田氏)



「Location AI Platform」は、既存顧客が多いエリアや離反したエリア、競合に取られたエリアなどを色別で直感的に理解しやすく表示しているため、チームでの共通認識も得やすい。消費者のリアルな行動を掴むことで、確度の高い戦略立てにもつながるというわけだ。

「景気が悪くても選ばれる店、選ばれない店があるわけです。もし、『最近客足が減っている』という事実が浮き彫りになったとき、データの行動傾向から、『どうやら競合に取られているようだ』『そもそも商圏への人流が減っている』など位置情報から推測できます。これまで、属人的な分析になりがちだった仮説の部分を、データで裏付けられるようになります。それにより、さらに効果的な商品戦略や販促プロモーションの見直し改善につなげることができると考えています」(濱田氏)

実際に、中期計画の立案や各種プロジェクト、経営会議や取引先支援、コンサルティングのための市場分析資料として使われることも多くあり、従来よりも必要な投資を行うための稟議決裁が通りやすくなったという声も届いているそうだ。また、同社では「Location AI Platform」の利用企業に、SNS広告の配信サービスや消費動向アンケート調査も提供している。新型コロナウイルス感染拡大の影響でSNSを利用する時間が長くなる傾向にある中、潜在顧客へ効率的にメッセージを送る手段として、このサービスを導入する企業も増えているという。

「位置情報ビッグデータの解析に基づいて、消費者のリアルな行動変化を捉えることで、より精緻なターゲティングユーザーを設定することができます。店舗利用者の推定居住エリアへの広告配信だけでなく、過去に来店履歴がある顧客や前日の来店客、競合を利用していると推測される人も配信ターゲットに選定できます」(濱田氏)

データ活用の“ロケーションデータ活用の習慣化”が企業の競争力を鍛える


現在、「Location AI Platform」は、企業のDXをさらに後押しするべく、進化を遂げようとしている。

「たとえば、小売店が保有している購買データと連携させ、機能を拡充させる計画も進んでいます。単日の売上実績、達成率などのデータを紐づけることで、さらに的確な戦略を立てられると考えています。データ連携は顧客からの要望が多い部分ですね」(濱田氏)

同社では、「Location AI Platform」の活用にあたり、希望する企業にはコンサルティングも実施しているというが、基本は企業の自走を理念としている。

「『会社の課題や目指す方向はあるけど、データをどう活用していいのか分からない』という声は多く聞かれます。そこで、Location AI Platformの導入時には、使い方のみならず、有効な活用方法もお伝えします。

ただし、いつまでも伴走することは望ましくありません。我々はいわば自動車教習所の教官。ある程度コーチングをしますが、運転を上達させるためには、自分でハンドルを握り、いろいろな道を走る必要がありますよね。私は、データを活用したDXも同じだと思っています。データ基点の戦略立案や施策が当たり前になることで、社内DXの実現も近づくはずです」(濱田氏)

データ活用は仕組みだけ作ればうまくいくわけではないと語る濱田氏。とりわけ購買チャネルが多様化した今の時代、小売業はデータを当たり前に使うカルチャーの定着が急がれるという。


「お客様軸で物事を捉えることが、ますます必要になる中、施策の良し悪しをクイックに判断できるようになることが最も重要。成果に結びつけるためには、データを介在させた仮説と検証を短いスパンで繰り返していくことが必要だと考えています。新しいことをチャレンジするというよりは、データをフル活用して、これまでやりきれていなかったこと、やるべきだったことをしっかりやることが、今求められているのではないでしょうか」(濱田氏)

人の流れを捉え、分析することは、あらゆるビジネスの武器になると話す濱田氏。見据える未来は壮大だ。

「これは我々自身にも言えることですが、業種業界問わず、お客様の選択肢には代替えサービスもあれば、類似製品やサービスもあります。お客様に選ばれ続けていくためには、『お客様の立場で考え行動し続けていくこと、気づきの連続』が大前提となります。

すなわち、『気づきを受け入れる器づくり』が問われていると言えます。それを牽引するのは情熱や使命感であったりしますが、それがどこから来ているのかと言えば、企業理念への共鳴であったり、ミッションに対する使命感や達成感であったり、企業や上司からの正当な評価や部門を越えた仲間たちとのシナジーにあったりします。

私は当社のサービスを通じて提供できる付加価値には、『情報』『知識』『智慧』の3段階があると考えています。AI化が加速すると限りなく『情報』『知識』は増えていくことになりますが、それを企業力に昇華させるためには仮説検証を繰り返し、経験を重ねていくことで得られる『智慧』の段階が、実は最も重要であると思っています。

私たちは、当社のサービスを通じて、位置情報を誰でも使えるようにすることを実現し、情報を知識に、そしてそれを智慧へとつなげ、『企業づくり』『人づくり』に寄与していまいりたいと考えています」(濱田氏)


ビジネスにおけるデータの活用は、まだこれからという業界も多い。特に小売業では、大きな活用領域があるとされているが、人流データの解析が販売戦略のみならず、経営戦略までも変えていく未来は、ごく近いところになるのではないかと感じる取材だった。

取材・文=末吉陽子

クロスロケーションズ株式会社
https://www.x-locations.com/
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