導入事例

金融機関や金融業界で広がるAIサービス

AI Start Lab 編集部 2021.2.2
インターネットの爆発的な普及と金融自由化の流れによって、2000年ごろから金融業界ではデジタル化されたサービスが次々と生まれた。この潮流にあわせて、顧客接点は従来の対面型から、人間を介さないWebなどのシステムでの対話型へとシフトした。住宅ローンや生命保険、損害保険さえもスマートフォンだけで申し込みや購入が可能になるなど、いたるところでデジタル化が進み、同時に大量のデータが蓄積され続けている。

現代では、このデータを生かしたサービスの向上や大量のデータ処理効率化が求められている。そこで必要とされるようになったのがAIだ。それまでは対面で五感を使って得ていた顧客の情報を代わりに集めたり、あるいは人間の手で大量のデータを分析していた作業を高速で処理したりといったように、AIはもはや私たちにとってなくてはならない存在になりつつある。今回は、このAIが金融機関において活用されている事例を、企業とともに紹介する。

コミュニケーションのAI解析「コグニティ」


営業トークなどのビジネスコミュニケーションのAI解析技術を持つコグニティは、2019年10月に提供を始めた金融機関向けサービス「UpSighter for Finance」をパッケージサービスとして大幅リニューアルした。商談やロープレの音声データをもとに模範社員とその他のトーク傾向の違いを解析、担当者一人ひとりに対しフィードバックレポートを還元する。自分のトーク傾向と、同社が保有する金融機関のトーク傾向や、模範社員のトーク傾向とを比較することが可能で、模範社員の話法例をもとに営業トークを改善することができる。銀行出身の社員が開発に携わっており、金融機関における営業プロセスに合わせたフィードバックが実現するレポートとなっている。

「UpSighter for Finance」はフィードバックレポートをポータルサイト上にPDFで還元するため、集合研修ができなくても各支店・支社にいながらロープレ研修のような教育を実現。新型コロナウイルスの感染拡大によって対面での教育が難しくなる中、有効に活用できる。また、レポートを使うことで指導者の経験や感覚のみに頼った指導を防ぎ、偏りのない均一な指導・教育が可能だ。同社のAIサービスはこれまで、株式会社みずほ銀行や株式会社伊予銀行をはじめ金融機関10社で導入実績があり、法人・個人営業や窓口のロールプレイ研修・現場教育、アウトバウンドコールセンターにおける教育など幅広く活用され、非対面での研修・教育実施と、非対面での営業力アップをサポートしている。

校閲・校正業務にAIを活用するみずほ銀行


みずほ銀行は、凸版印刷と共同で、同社が開発した「AI校閲・校正支援システム」の実証実験を2018年12月~2019年3月まで実施。広告制作物における校閲・校正業務の効率化を目的に、2020年1月より同システムの運用を開始している。同行では制作したパンフレット等の原稿作成作業において、専門用語などのレギュレーションチェックや差し戻しに対する修正作業など、制作・確認の両部門ともに負担がかかっていた背景がある。また、制作レギュレーションに対する校正スキルやナレッジの属人化も課題となっていた。

この「AI校閲・校正支援システム」は、誤表記検出や制作レギュレーションの管理の実現、制作業務に最適なインターフェースの提供など、AIを活用することで印刷物・デジタル媒体に関する業界・企業特有の表記や専門用語を学習し、企業ごとの基準に合わせて、文章の校閲・校正を可能にしている。実証実験の結果、広告制作物における校閲・校正業務の負荷削減やヒューマンエラーの減少など、制作業務フロー全体の業務効率化と品質向上の有効性が確認されている。

融資審査の稟議書作成にAIを活用する京都銀行


効率的な業務運営と高度なサービスの提供を目的として、2017年11月からNTTデータとAIを活用したシステムの実証実験に取り組んでいるのが京都銀行だ。同行では、融資プロセスでの稟議書作成業務が経験の少ない行員にとって大きな負担となっていた。そこで、NTTグループのAI技術「corevo®(コレボ)」を活用した、金融機関の稟議書起案を支援するサービスを開始。融資審査業務における稟議書作成支援の第一段階として、稟議書添付資料検索システムの試行に着手した。担当者が検索画面でいくつかの項目を入力すると、AIが過去の稟議書等の中から、高精度な情報抽出を実行。類似性の高い事例を検索、参考として表示し、稟議書作成をサポートする。

短時間かつ高確率で検索できることから、稟議書作成にかかる時間の大幅な短縮が期待できる。また、融資業務の効率化や行員の働き方改革、経験が浅い銀行員の教育に資する、なども成果として挙げられる。2019年3月から10店舗で試行を開始し、今後も対象店を順次拡大していく予定だ

顔認証可能な次世代ATMを導入するセブン銀行


セブン銀行とNECは、顔認証技術を搭載した次世代ATM「ATM+」を開発、2020年9月より順次導入し、入れ替えを始めている。生体認証やAI・IoTなどの技術の進展を踏まえ、「ATM+」では顔認証による本人確認や本人確認書類の読み取り、QRコード決済、スマートフォンへの情報発信などに対応。口座開設や住所変更が可能になる。顔認証にはNECの世界No.1の認証精度を誇る顔認証AIエンジン「NeoFace」を採用した。

また、AIやIoTを活用することで、ATMごとに現金の需要予測の高度化や各種部品の故障予測を行い、さらなる運営の効率化もめざしている。他にもユニバーサルデザインの追求や防犯対策、環境負荷の低減などを通じて使いやすさや安心・安全を追及していることも特徴で、2019年10月からセブン銀行口座開設受付、地震計の設置などの実証実験も行っている。2024年度までには、全ATMの入替設置を予定。

AI活用の外貨預金サポートを提供するじぶん銀行



じぶん銀行は、2017年からAIを活用した「AI外貨予測」と「AI外貨自動積立」のサービスを提供している。「AI外貨予測」は、米ドル/ユーロ/豪ドル/NZドル/ランドの「1時間後/1営業日後/5営業日後」の為替の上昇・下落を、AIが予測し、アイコンで結果を表示する機能。

また、「AI外貨予測アラート」は、5営業日後終値が上昇する確率が63%以上で、期間内に高値が+0.5%を超えて上昇すると予測されるとき、プッシュ通知される機能だ。同サービスはスマートフォンアプリで利用でき、取引はすべてスマートフォン上で完結できる。

「AI外貨自動積立」は、AIが当月内の営業日の中でより安値(円高)で購入することが可能と判断した日に、利用者が指定した金額を円普通預金口座より自動的に引き落とし、外貨普通預金への預入れを実施するサービス。AI外貨予測の実績としては、AI外貨予測アラートが71.1%の的中率を挙げている。また、「AI外貨予測」「AI外貨自動積立」は、「MCPC award 2018」でユーザー部門モバイルビジネス賞を受賞、「Efma-Accenture DMI Awards 2018」のアナリティクス&人工知能部門で、銅賞を獲得している。

AIで銘柄を選定する投資サービスを開始した新生銀行


新生銀行は、ヤフーのマルチビッグデータを利用した、Yjam(ワイジャム)投信シリーズの取扱いを2018年7月より開始している。Yjamプラスでは、経済及び企業の状況、株価の状況といった、株価データ・出来高、決算データなどの伝統的金融市場関連データにプラスして、日本最大級のインターネット企業であるヤフーのマルチビッグデータを利用。人間の心理が作り出す市場の動きを24時間365日、AIを用いて解析・判断し、同社に蓄積された膨大で多彩なデータから規則性を見つけ出す。

市場平均を上回る確率の高い銘柄を選定し、合理的に投資先を決定することが大きな特徴だ。申込手数料(税込)も2.16%、信託報酬(年率・税込)0.9936%と低コスト。また、為替リスクを抑えて、安定的な運用を望む顧客には、より安定性を重視したYjamライトというサービスもある。

投資用不動産分析ツールを活用するオリックス銀行


オリックス銀行は、リーウェイズ株式会社が開発した投資用不動産分析ツール「Gate.」を独自改良し、シミュレーションサービスを開発。不動産投資では一般的に、ローンの返済リスクなどに関する不安があった。顧客は自身が投資を検討している物件情報とローンの借入条件を入力することで、5,800万件を超える物件データをAIで解析して得た「賃料」や「空室率」の収益変動予測と修繕費などの運営経費の想定値が初期表示され、シンプルな操作で不動産投資の将来キャッシュフローを試算することが可能になった。これによって将来の投資・ローン返済リスクの比較検証が容易となり、顧客の心理的なハードルも軽減された。

コンプライアンス業務を月200時間削減したイオン銀行


イオン銀行が導入したのが、FRONTEO社が提供する独自開発のAIエンジン「KIBIT(キビット)」。これは、投資において銘柄の選定理由が記載されているか、投資初心者説明(投資初心者に対して定められている説明事項)などの有無をチェックするものだ。同行は合わせて、RPAテクノロジーズ社が提供しているソフトウェアロボットの導入・運用を支援するデジタルレイバープラットフォーム「BizRobo!」を導入し、形式的な書類の不備や異常値などを見つける作業も自動化した。

両システムの導入の背景には、工数の増加という課題があった。金融商品を販売する際、1時間ほど店舗で顧客と面談を行う。その後、適切な勧誘であったかどうかを確認するため面談記録を作成し、法令遵守、適合性(購入の意志、理解度など)といった観点から第3者によるモニタリングを行うが、面談記録のモニタリングには3つのシステムをまたいで使っているため、1案件あたり最低でも約6分かかってしまう。取引件数の増加につれ、手間が増えてしまっていた。

人間による目視での確認では、すべての案件に目を通して疑いのある案件を100%抽出できるのに対して、KIBITを使用した場合は、全体の下位40%をチェックするだけで90%の疑いのある案件を抽出。全体のAIとRPA(Robotic Process Automation)の導入により、行員はコンプライアンス違反の疑いのある案件のみをチェックするだけで済むようになり、その結果、月間の作業時間はこれまでの250時間から50時間に減少した。今後は通話記録などの音声データのモニタリングや、営業成績の良い行員の会話内容の解析・ノウハウ展開を検討している。

金融機関を支えるAIサービスの未来


ご紹介したように、すでにAIサービスは各金融機関において重要な役割を果たしている。デジタル化はもちろんのこと、多種多様なデータの蓄積が進んでいく中で、よりその存在感は増していくと考えられる。人間の手でできること、AIに任せた方がいいこと。それらを見極め、適切な施策をフレキシブルに導入していくことが、金融機関に限らず、これからの企業における課題になってくるだろう。

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AI Start Lab 編集部

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