導入事例

東京ドームでも試験導入!日立製作所の「人流可視化ソリューション」が混雑緩和に貢献

AI Start Lab 編集部 2021.2.19
カメラ映像を解析して、人型アイコンでプライバシーを保護しながら、人の滞留や流れを見える化できる「人流可視化ソリューション」を提供する日立製作所。鉄道や施設などの事業者が、混雑緩和策や交通誘導策の参考材料にするべく導入している。技術の特徴や活用事例について、日立製作所 社会システム事業部の渕上愛(ふちがみ・あい)さんに詳しく聞いた。

お話をうかがった、日立製作所 社会ビジネスユニット 社会システム事業部 交通システムエンジニアリングセンタ 主任技師 渕上愛さん

「止まっている人」「動いている人」を人型アイコンに置き換え、個人の特定を防止


日立製作所では、かねてより混雑緩和や移動の安全確保に役立てる技術を提供しようと、人流を可視化するシステムの開発を進めていた。そして、2016年10月に「人流可視化ソリューション」をリリース。現在、東急電鉄や京急電鉄など、鉄道事業者を中心に導入が進められている。

このシステムの特徴は、既設の監視カメラなどで撮影した映像を瞬時に解析し、人型のアイコンに置き換えて表示できるところだ。これにより、個人を特定することなく、その場所にどれくらいの人が存在するのかを、ほぼリアルタイムに把握することが可能だ。具体的な使用方法について、渕上さんは次のように説明する。


「カメラと接続されているPCに『人流可視化ソリューション』のソフトウェアをインストールし、各種設定を行えば解析を行うことができます。解析後の出力結果は、このようにシンプルなもので、映像から人の動きの特徴点を抽出し、人間と物体を区別しています。解析した映像は、人型のアイコンで出力されますので、それをスマートフォンやサイネージなどに出力することができます」(渕上さん)

人型のアイコンは、「止まっている人」は黄色、「動いている人」は青色で表示される。このようなアウトプットによって、その場の混雑状況を一目で把握することができる。なお、人型アイコンは、ユニバーサルデザインにもとづき、視覚に障がいのある方も認識しやすい色を採用したとのこと。

また、個人情報をなるべく速やかに破棄するため、画像のうえにアイコンを被せるのではなく、人の位置を一旦座標に置き換えてから、人型アイコンに出力する処理が行われている。そのため、アイコンを貼り付け忘れた状態でアウトプットしてしまう、という危険がなく、確実にプライバシーが保護される。

日立のカメラ画像の利活用は、高水準でプライバシー保護を実現しており、経済産業省がカメラ画像の取り扱い指針を示した「カメラ画像利活用 ガイドブック」にも則ったものとなっている。

駅利用者の行動変容につながる人流可視化ソリューションの凄さ


2018年に東急電鉄の86駅に導入された「駅視-vision(エキシビジョン)」には、日立の「人流可視化ソリューション」が採用されている。これは無料で利用できるスマートフォン向けの「東急線アプリ」に組み込まれている。


ユーザーは、アプリのメニューの「改札混雑度」や「駅情報」から「駅視-vision」のコンテンツを見ることができる。

「改札混雑度」からは、東横線をはじめ6路線から路線を選び、さらにそこから駅を選ぶと、改札の画像をチェックすることができる。また、併せて混雑度が1~4の数字とグラフで表示される。この混雑度の数値については、止まっている人と動いている人の割合から、独自のロジックで算出しているという。

では、「駅視-vision」を導入したことで、どのような効果があるのだろうか。

「いずれも、1分ごとに情報を更新しており、ほぼリアルタイムで確認できるため、輸送障害や遅延が起きたときに、チェックされるユーザーが多いと聞いています。『駅視-vision』で混雑の様子を確認して、『今すぐ駅に行っても乗車が難しそうだから、駅に行くのはもう少し待ってみよう』、『迂回ルートがないか確認しよう』など、行動判断の材料になる使い方をされているようです」(渕上さん)

このように、公共の場の人流を見える化し、幅広い人が把握できることの意義について、渕上さんは次のように考察する。

「第一には、安全性の確保につながるという意義があると思います。これまで、駅の混雑状況を知りたいと思ったら、駅に行って直接確認するしかありませんでした。しかし、離れた場所からでも、スマートフォンさえあれば確認できるため、個人が行動を変えることができます。それにより、駅構内の混雑による事故防止や、駅係員のオペレーションの負担軽減などにも期待が持てます」(渕上さん)

今後は、日立が持つ列車内の混雑可視化技術と組み合わせて、包括的なソリューションの提供も検討していくという。

東京ドームの混雑度合いを計測。コロナ禍での安全確保施策の一助に


日立の人流可視化ソリューションは、駅のみならず施設での技術立証の取り組みも進められている。2020年11月1日、7日、8日の3日間にわたり、東京ドームで開催されたプロ野球の公式戦において、同施設での新型コロナウイルス感染対策や混雑緩和、誘導策の検討のために採用された。


「11月1日は、1万9000人程度(収容人数全体の約45%)の来場者を上限とし、7日と8日は各日3万4000人程度(全体の約80%)を上限として公式戦を開催、技術立証を行いました。人数の違いによって混雑する場所にも違いが出るのか、どこの出入口が混みやすいのか、実際にどの部分に人が滞留しているのかを比較分析したいということで、読売新聞社様と読売巨人軍様からご依頼をいただき、人流可視化を実施しました」(渕上さん)

東京ドーム内に設置された102カ所の既設カメラのうち、十数カ所の映像をもとに人流可視化を行い、その結果をレポートで提出したという。

「こちらのケースは、一般ユーザー向けではなく、施設事業者様が今後の混雑施策を練るうえで導入された例になります。レポートは、場内の警備員の最適な配置の検討時のデータとして活用されると聞いております。たとえば、時間によって混みやすい場所を抽出し、警備を手厚くしようというような検討時に、根拠となるデータとして、お役立ていただけると思います」(渕上さん)

人流可視化ソリューションは、駅だけではなく、施設での安全な対策立案を考える際に活用してもらいたいと、渕上さんは言う。

「このソリューションの導入による投資対象効果を定量的に評価することは難しいかもしれません。しかし、事業者様は施設の運営にあたり、さまざまな責任を負っていらっしゃいます。その一つが『お客様の安全確保』であることは、間違いありません。お客様に駅や施設を安心して使っていただくことは、一番優先すべきことだと思いますので、そこに貢献できるソリューションとして活用いただきたいと思っています」(渕上さん)

これまで、利用客が駅や施設の混雑状況を、遠隔から把握することは困難だった。しかし、人の動きのタイムリーな配信と、個人情報保護の両立を実現させた日立の技術によって、混雑状況を多くの人にリアルタイムで届けられるようになった。今後、個人の行動変容もさることながら、事業者がコロナ対策やイベントなどの安全対策を練るためにも、駅や施設への導入の加速を期待したい。

取材・文=末吉陽子

日立製作所 カメラ画像を活用した人流可視化ソリューション
https://www.hitachi.co.jp/products/it/society/product_solution/mobility/human_flow_cctv/
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