導入事例

3密可視化から子供の思い出写真まで!未来をつくるエッジAIカメラ「ミルキューブ」

AI Start Lab 編集部 2021.3.9
コロコロっとした10cm四方のキューブ型デザインが目を惹く「ミルキューブ」。端末(エッジ)で必要なデータのみを抽出してクラウドに送信する、という処理ができる“エッジAIカメラ”だ。現在、混雑状況の可視化はもとより、思い出に残すための自動撮影カメラとして導入されるケースもあるという。

ミルキューブを開発したのは、「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」というミッションを掲げ、介護・医療・働き方・ロボット・金融などさまざまな領域でAIプロダクトの開発と実用化に取り組む、株式会社エクサウィザーズ。製品の特徴や具体的な導入事例について、開発チームを統括する土倉 幸司(つちくら・こうじ)氏に聞いた。

端末でデータを取捨選択できるエッジAIカメラ「ミルキューブ」の強みとは



コロナ禍をきっかけに、急速に注目されはじめたAIカメラ。なかでも、端末内で必要なデータだけを抽出して送信する、という発想から生まれたのが、エッジAIカメラ「ミルキューブ」である。

「AIカメラの基本的な仕組みとしては、カメラで撮影した画像データをネットワークでクラウド上にアップしてAIで解析する、というものです。しかし、すべでの画像データを送信するとなると、サーバーに負荷がかかり、コストもかさんでしまいます。

その難点を払拭できるのが、エッジAIカメラです。最大のメリットは、データ送信の絶対量が減ること。それにより、ネットワークの負荷が軽くなり、コストも削減できます。また、不要な画像はすぐに削除し、必要なデータに絞って解析するため、プライバシー保護の観点からも、安心安全な運用が可能になります」(土倉氏)

では、必要なデータとは、具体的にどのようなものなのだろうか。土倉氏は、広島県の観光施設での導入事例をもとに、次のように説明する。


「たとえば、広島県の美術館や博物館では、エンドユーザー(来場者)向けに、WEBサイトで混雑状況を公開しています。このときに、必要なデータというのは、人物の位置と混雑率です。人物については、個人の特定を避けなくてはいけないので、そもそもリアルな画像データは必要ありません。そのため、どのポジションに人物がいるのかを、カメラで俯瞰的にトラッキングし、人物のアバター化と混雑率についても、端末内でデータ加工の処理をしています」(土倉氏)

ミルキューブには、人物にフォーカスしてトラッキングし、誰がどこで何をしているかを解析できるアルゴリズムが搭載されている。そのため、一般的な顔認証だけではなく、骨格や服装などからも人物を捉える技術を用意しているという。

「たとえば、AIカメラをマーケティングで活用する際、お客様とスタッフを判別する必要があります。そこで、判別の目印として有効なのが服装です。スタッフがユニフォームやエプロンを着用している場合は、その特徴を捉えて、分析対象から外すといったことも、ミルキューブなら可能です。

他にも、倉庫作業の把握であれば荷物を持っている人、清掃状況の把握であればモップやほうきを持っている人など、捉えたいデータが何かによって、トラッキング対象をカスタマイズできる技術を用意しています」(土倉氏)

最近は、混雑率計測とマーケティングの両方の用途で使いたい、という問い合わせも増えているとのこと。AIプロダクトに特化し、多様な要望に応えるべく技術を蓄積してきた同社だからこそ、ミルキューブを創り出すことができたと言える。

ミルキューブで子供の成長する姿を逃さない



ミルキューブは機能だけではなく、デザインにもこだわった。コンシューマー向けのプロダクトデザイナーをアサイン。いわゆる監視カメラのような威圧感のあるものではなく、日常に溶け込むようなものを目指したという。その狙いが当たってかどうかは定かではないが、意外なニーズの掘り起こしにもつながっている。

「ミルキューブの開発段階で保育園の方と意見交換する機会がありました。その中で、『子どもの成長はあっという間なのに、保育園に預けている時間が長いと成長を記録することができないのが残念』という声が上がったんです。これまで保育士さんが写真アルバムを手作りするなど、工夫されていたそうですが、忙しくて写真を撮る暇がないとのこと。それを聞いて、もしかしたらAIカメラならその課題を解決できるのではないかと考えました」(土倉氏)

AIカメラのユースケースは、防犯や混雑回避を目的にしたものがほとんど。“思い出に残る写真”を残すための利用は新しい試みだった。

「まず、自動的にベストショットを抽出することを前提に開発を進めるにあたり、ベストショットとは何かを整理することからはじめました。たとえば笑顔や友達と遊んでいるシーンなど、さまざまな観点から抽出すべきロジックを検討。それに合致したものだけ撮影をするようにしました」(土倉氏)


実証実験では、園児たちの行動範囲を特定し、ミルキューブを3台置き、1日かけて撮影。動画から画像を切り出すかたちにしたところ、トータルで20万枚の撮れ高があったという。

そこから顔がしっかり写っているものを抽出すると約5万枚、さらに笑顔の表情を抽出すると約8,000枚、最終的に着替えなど共有するには不適切な写真を除くといったように、画像を自動でフィルタリングするベストショットアルゴリズムにより厳選したところ約300枚に絞れたそうだ。

「撮影した写真はクラウドに送り、最終的にアプリを使って保護者が選定して、質の高い写真だけを届けていく、というサービスに落とし込んでいます。ミルキューブは高性能カメラを搭載していることから、L判にプリントアウトしても満足いただける解像度です。ただ、イメージとしては、お子さんの日々の成長をアプリでアルバムのように眺めるようなご利用を想定しています」(土倉氏)

ちなみに、保育園にミルキューブを置いた際は、まったく違和感がないと好評だったそう。また、常設型ではなくパッと持ち運びができるサイズのため、将来的には屋外で利用できるよう防水対応のタイプも検討しているそうだ。今後は保育園に限らず、結婚式や旅行での横展開も見据えているという。

AIプロダクトは民主化の発展途上。だからこそクライアントの伴走者でありたい



ミルキューブは、エクサウィザーズのポリシーが凝縮されたようなプロダクトでもある。それは、土倉氏の「我々のミッションは、ミルキューブの販売や普及ではなく、あくまでもお客様の課題解決と社会課題の解決です」という言葉からも感じ取れる。

「当社は、お客様の課題解決のため、コンサルティングにも注力しています。私も経営コンサルティングのバックグラウンドを持っており、必ずお客様の課題や叶えたいことをヒアリングした上で、その解決手段としてAI活用が有効かどうか検討し、計画を策定します。

たとえば、広島県の観光地にミルキューブ導入した際も、『コロナ禍で観光客が減る中で、安心安全を伝えたい』とのご要望をいただいてからヒアリングを重ねた結果、AIカメラの活用に意義がある、という結論になりました。保育園への展開も同じく、保育士さんの負担を減らし、保護者の方にも満足してもらえるサービスを考え、辿り着いた結果です」(土倉氏)

エンジニアだけではなく、経営課題の解決に精通した人材を配置し、チームでクライアントに向き合うという土倉氏。依頼主の成長戦略を踏まえたうえで、ソリューションを提案するのが、エクサウィザーズの真骨頂だ。


なぜ、モノを売るだけに留まらず、コンサルティングも手掛けるのだろうか。それには、“AIの民主化”に懸ける想いがあるようだ。

「AIカメラを徹底的に活用している企業もありますが、使いこなせている企業はそう多くはない、という印象です。AIカメラは導入して終わりではなく、さまざまな課題を解決できるようになって、はじめて価値あるツールになります。これは、AIソリューション全般にも言えることです。

今後、AIの民主化のためには、お客様の課題解決に結びつく提案をセットで行う必要があると思っています。そして、最終的には、お客様の先にいるエンドユーザーへの価値提供も見据えた開発にこだわっていきたいと思います」(土倉氏)

現在、発展途上にある日本のAI 産業。かたや、技術や性能は目ざましい進歩を遂げている。そんないま、産業としてのさらなる成熟を目指すためには、「誰が、何のために、どうAIを使うべきか」をしっかりと汲み取り、コーディネートする仕事が必要なのではないだろうか。取材を通して、エクサウィザーズには、そうした役割を担う覚悟と矜持が感じられた。

取材・文=末吉陽子

ミルキューブ
https://milcube.com/

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AI Start Lab 編集部

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