コラム

日本が誇るスーパーコンピュータ「富岳」が予測!新型コロナ感染拡大防止策とは?

AI Start Lab 編集部 2020.10.30
画像は理化学研究所プレスリリースより

今、AI(人工知能)などを活用し、飛沫の拡散のシミュレーションする試みが行われている。これにより日常生活や劇場、イベント会場などで、新型コロナウィルスの飛沫感染を予防する際に有効な対策や注意点などを検討することができるという。なかでもスーパーコンピュータ「富岳」を利用した、模擬実験(シミュレーション)結果に注目が集まっている。

スーパーコンピュータ「富岳」の性能が可能にした迅速なシミュレーション


理化学研究所(理研)などによる研究チームは、くしゃみや咳、会話などで発生する飛沫がどのように拡散されていくかなどを、スーパーコンピュータ「富岳」を使って、シミュレーションした結果を公表している。

飛沫飛散経路の予測は、空気の流れや室温、湿度などの影響も加味しなければならず、これまでの計算機では困難であった。しかし「富岳」の性能を使えば、複雑な物理モデルを詳細にでき、大規模なシミュレーションを迅速に行うことが可能になったとのこと。また容量も大きいため30〜50のケースを同時並列でシミュレーションできる点も「富岳」の魅力だという。

空気中に漂うエアロゾル



発表された結果によると、会話などで飛ぶ飛沫には、比較的大きなものと、エアロゾルと呼ばれる0.5μm(マイクロメートル=1/1000mm)以下の微粒子があり、エアロゾルは長時間に及んで空気中に漂うため、対策が必要になってくる。

1分間の会話では約900個の飛沫が飛び、歌唱した場合は約2,500個ほど、強い咳2回で30,000個ほど飛ぶことがわかった。また会話であれば20分ほど、歌唱であれば5分ほどで1回の咳と同じ量が発生し、後者の方がより遠くまで飛ぶ。そして湿度が低いと飛沫がエアロゾルになりやすく、より拡散しやすいこともわかっており、秋冬にかけて乾燥する季節では十分注意する必要がある。

テーブルでは横の人こそ注意が必要


飲食店などを想定し、縦60cm、横120 cmのテーブルについた4人の人間がマスクをせずに会話をした場面をシミュレーションしたところ、飛沫は比較的、真っ直ぐに飛ぶ性質があり、話しかけた人以外には、ほとんど到達しないという。

そして話し手が相席者全員に均等に話しかけた場合、最も多く飛沫を浴びるのは隣の席の人で、その量は正面に座った人物の5倍程度。斜向かいに座った人物は正面に座った人物の4分の1程度まで減少する。

これまで食事などをする際、対面よりも横並びが推奨されてきたが、隣の人にこそ対応が必要だという結果が出ているのだ。またオフィスなどでパーテーションやアクリル板などを使って間仕切りをする場合、仕切りの高さを床から120cm(口より少し上まで隠れる程度)から140cmにすることで、飛沫の到達量が10分の1程度に減らせる。しかしあまり高い仕切りを設置してしまうと、喚気のムラが発生して空気が淀んでしまい、逆に感染リスクが高まってしまうこともわかった。扇風機やサーキュレータなどを活用して、換気ムラをなくすことも重要だ。

綿素材でも一定の効果。マスクの着用は重要な感染症対策



マスクを使ったシミュレーションも行われており、不織布マスク、手作り布マスク(ポリエステル相当)、手作り布マスク(綿相当)の3種類の素材による飛沫抑制効果の比較もされた。それによると不織布マスクは50μm以上の飛沫を完璧に抑制。

ポリエステルマスクでは9割以上。綿マスクでも8割以上を抑制するという結果になった。しかし飛沫のサイズが小さくなるほど抑制効果は下がっていき、特に不織布マスクは空気抵抗が大きいため、横から漏れる飛沫が多く、小さいサイズの飛沫だけを見れば布マスクよりも性能が落ちるという。とはいえ全体的に見れば不織布マスクが最も抑制効果が高い。

またマスクをした状態での呼吸による飛沫の吸引シミュレーションも行われ、顔との間に隙間がない医療用マスクなどであれば、飛沫をほぼブロック、隙間がある場合でも上気道に入る飛沫を3分の1程度にすることができる。つまり、マスクは自分を守る上でも効果があり、また不織布マスクが飛沫抑制には効果が高いが、それ以外のマスクでも一定の効果があるということもわかった。フェイスシールドに関しては50μm以下の飛沫のほとんどが隙間から漏れてしまうため、効果は限定的だという。

上手に換気をすることが感染リスクの低減につながる


MWPHOTOS55 / Shutterstock.com

空気中に漂うエアロゾルの対策にはやはり換気をすることが効果的だ。電車内やオフィス、病室などでは、換気ムラができやすいため、窓を開けるのと合わせて、扇風機やエアコンなどを活用してまんべんなく空気を入れ替えることなどの工夫が必要になる。

また混雑した電車内では、窓を開けても場所によっては換気が十分にされないこともわかった。逆に空いている車内であれば窓を閉めていても十分に換気がされるという結果も出ているため、まずは可能な限り過密状態を避けることが重要だ。

また2000人規模の多目的ホールなどでのイベント開催時の評価もされている。多くのイベントホールでは換気や空気循環についてよく考えられており、神奈川県川崎市にある実在の会場をもとにしたシミュレーションでは、ホール全体に汚染した空気でも10分程度で清浄化されるとのこと。また演者がステージ上で咳などをした場合、エアコンがない状況であれば2〜3m離れることで、リスクはかなり減らせるが、エアコンがかかっていると、気流に乗って拡散してしまう。演者がフェイスガードをすることでは限定的な効果しか期待できないため、換気能力を高めることで対策していかなければならないだろう。観客においてはマスクをして、横の席を開けることで、リスクが低減するということだ。

「新しくて普通」の生活のために


今後はタクシーやバス、飛行機などでのシミュレーションが計画されているという。そうすることで、イベントや興業を、安全にかつ盛大に行ったり、安心して遠くまで移動することが可能になるかもしれない。今回、スーパーコンピュータやAIによるシミュレーションが、withコロナでの生活スタイルのヒントになったのは間違いないだろう。この先、新たな普通の生活を送ってくために、ますますAIやスーパーコンピュータの活用が期待されているのだ。


理化学研究所プレスリリース
https://www.riken.jp/pr/news/2020/20200407_1/index.html

印刷ページを表示
WRITTEN by

AI Start Lab 編集部

AI・人工知能のビジネス活用についての情報をさまざまな視点からお伝えしていきます。

AIのビジネス活用に関する
最新情報をお届け

会員登録

会員登録していただくと、最新記事やAI関連のイベント情報を受け取れたり、その他会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。