AI入門

【AIの基礎】非エンジニアが知っておきたいAI・人工知能のキホン

山際 貴子 2020.10.1
今やAI・人工知能は生活のいたるところで活用されており、私たちは意識することなく利用している。

しかし、現在実用化されているAIがどのような仕組みになっているのか、知る人は意外に少ない。

AIとはどのようなものなのか。どのようなことに活用されているのか。

いざAIを活用する時に困らないように、最低限必要な知識を押さえておこう。

AIは知能ではない?


AIとは、いったい何だろうか。有識者に聞いても、返ってくる答えはさまざまだ。

ある人は「究極には人間と区別がつかない人工的な知能」といい、ある人は「人工的に作る新しい知能の世界」という。

人間と同等の知能なのか、まったく違う次元の知能なのか。有識者の間でも意見はまったく同じではなく、そもそも知能という定義もはっきりしていない。

それほどAIは定義があいまいなものであるという点は押さえておきたい。

AIが一躍脚光を浴びたのは、レイ・カーツワイル博士の力が大きい。

カーツワイル氏はAIの知能が人間の知能を超える「シンギュラリティ」が2045年に発生すると予測し、世界中を驚愕させた。

カーツワイル氏は未来学者でもあるが、OCRや文章音声読み上げマシンなどの発明家でもある。予測したことを自ら発明してきたカーツワイル氏の発言には、説得力がある。

2045年というとすぐ先の未来だ。人間をはるかに超える知能が、人間にどんな振る舞いをするのか。

AIに対して恐怖が芽生えるのも無理はない。

しかしAIが本当に人間を超える知能を持つようになるのかは、専門家の間でも意見が分かれる。

後でも触れるが、現時点のAIは知能を持っていない。大量のデータの中からパターンを認識しているにすぎない。

将来その精度は高まることは間違いないが、人間のように思考するのとは別物であり、人間と同等の知能は作れないだろうとする主張もある。

また、人間と同等の知能に達するにしても、現在はその道筋もたっていないため、ずっと先のことになるだろう、という主張もある。

いずれにしても本来のAIは何らかの知能を指す言葉であるが、現時点のAIは知能とは呼べない。

AIとは、現在のさまざまな研究が達成された先にある未来像を表現した言葉なのだ。

実は新しい技術ではない!? AIの歴史



AIと聞くと、最近登場した技術だと思う方もいるかもしれない。

実はAIの研究は1950年代からすでに始まっている。AIという言葉が始めて使われたのは、1956年のダートマス会議だった。

世界初の商用コンピューター「UNIVAC I」が発売されたのが1951年のこと。現在のようなトランジスタ方式ではなく真空管方式で重さは7.2トンもあった。

このようなコンピューターの黎明期からAIの研究開発は始まっている。

このころはすでに「推論」や「探索」が可能になり、迷路を解いたり、定理を証明したりできるようになった。
折しも冷戦が勃発し、アメリカでは自然言語処理による機械翻訳に力を入れた。

これが第1次AIブームだ。

日本が本格的に取り組んだのは、第2次AIブームからとなる。
1982年、政府の肝いりで始めた「第5世代コンピューター」プロジェクトでは、「人間を超える知能の創造」を目標に掲げ、「知識」をAIに持たせようとした。

しかしインターネットもなかった時代、残念なことにデジタルデータが決定的に不足していた。
もともと専門家の知見を取り入れた「エキスパートシステム」を作ろうとしていたが、知見がデジタル化していないため、それ以上進みようがなかったのだ。

このような紆余曲折を経て、現在は第3次AIブームの真っただ中にある。

ここへきて、機械学習が登場したことによりAIがようやく実用レベルに達し、生活に身近なところで使われるようになったといってよい。AIが実用レベルにまで達した要因はふたつある。

ひとつがマシンの性能向上だ。いままで天文学的な時間がかかっていた計算も、コンピューターの進化で短時間にできるようになった。

もうひとつがビッグデータの環境が整備されたことだ。インターネットの普及とIoT化の進展により、人間だけでなくモノからも情報を収集できるようになり、AIが判断する時に必要な大量のデータが整備されてきた。

■参考記事
AIの第1次から第3次ブームを解説、簡単にわかるAIの歴史

AIが人間を上回ることを私たちが実感した象徴的な出来事が、「AlphaGo(アルファ碁)」と名付けられたAIが、囲碁でトップ棋士に勝利したことだ。

すでに1997年にIBMのコンピューター「ディープ・ブルー」がチェスの世界王者を破っていたが、囲碁はチェスや将棋と比較して盤面が広く、打つ手の選択肢が膨大となるため、コンピューターが勝利するのは時間がかかると言われていた。

しかし、予想に反して2015年にそのハードルを軽々と越えてしまった。

アルファ碁の勝利は、AIの劇的な進化を裏付けたことになる。


囲碁で負け知らずでも人間にはかなわない理由


アルファ碁の快挙を見ると、もはやAIは人間を超えているようにみえる。

しかし、AIが人間を超えているのは、あくまで限定的な分野だ。例えば囲碁で対戦すると、人間はアルファ碁に勝てない。

人間はとりまく環境から情報を収集しながら自分で思考した結果、行動に移す。これはアルファ碁にはできないことだ。

自分で情報を取りに行き、幅広い局面で判断するという点において、人間にはかなわない。

こうした限定的なAIを「特化型」と呼ぶ。特化型AIは主に「ルールベース」「機械学習」が使われている。
ルールベースは人間が一つひとつルールを定義する必要があるが、機械学習は大量のデータからルールを導きだすことができる。

ルールを一つひとつ作っていくのは膨大な労力がかかるため、現在では機械学習が主流となっている。

機械学習の中には、主に「統計的学習」「ディープラーニング」「強化学習」がある。

統計的学習は、文字通り統計モデルがベースとなっている。

その意味ではディープラーニングも同様なのだが、ディープラーニングは脳の働きを模倣したモデルであることが特徴で、画像や音声のような非テキストベースのデータを高い精度で解析できることから、統計的学習と分けて語られることが多い。

強化学習は、後でも触れるがいくつかのポイントで「報酬」を設定し、報酬が最大化するようにAIが判断していくというものだ。報酬が最大化するためのプロセスは、完全にAIに任せる形になる。


なぜ特化型AIが知能と呼べないかというと、あくまでも限定的な分野を対象として、ルールや確率で判断しているに過ぎないからだ。

最近話題のディープラーニングは、人間の脳が学習するメカニズムを模したものではあるが、これも数式で表すことができる。

一方、人間のような知能を持ったAIを作ろうとする動きもある。このようなAIを「汎用型」と呼ぶ。

人間のような知能を持たせるために、特化型AIを脳全体の動きのレベルまで進化させるもの、人間の設計で脳の動きを定義するもの、脳の神経をそっくり模倣するもの、アプローチはさまざまあるが、現時点で実用化されたプロジェクトはまだない。

汎用型のAIはまだ発展途上ではあるが、例えば脳の神経を模倣するアプローチは、時間はかかるものの、将来的には実現できるといわれており、汎用型AIが人間をサポートする日が来るかもしれない。

AIはどのように活用がされているのか



特化型のAIについてはすでに実用化されている。どのようなことに活用されているのか、一例を紹介しよう。

顔認証・画像認識


スマートフォンで顔を映すだけで認証できる。

私たちがAさんとBさんが別の人だと判別するように、AIが画像から特徴となるポイントを抽出して、同一人物かを判定している。

画像認識は、顔認証の他にも、工場で生産する製品の不良を検知したり、病院でレントゲンから初期の病気を検出したりといったことにも使われている。

音声アシスタント・音声認識


スマートフォンやスマートスピーカーに話しかけると、音声で知りたいことをいろいろ教えてくれる。

こうした機能もAIの音声認識と音声合成、そして自然言語処理を組み合わせたものだ。今までのコンピューターと人間をつなぐインタフェースは、画面とキーボード、タッチパネルだった。

今はAIによって音声が新たなインタフェースになっているといえる。

未来の需要予測


「明日、清涼飲料水はどれだけ売れるか? 」といった判断にもAIが使われている。

過去の購買データや天気予報、周辺のイベントスケジュールなどさまざまなデータを学習して未来の販売量を予測する。

需要だけでなく、交通渋滞やサイバー攻撃の予測にも活用されている。

翻訳


第一次AIブームから取り組まれてきた機械翻訳だが、今では機械学習が取り入れられており、一般的なやりとりであれば、会話をするようにスムーズに翻訳をしてくれるまでに進化した。

自動運転


画像認識によって人や信号を識別し、センサーで前後を走行する車との車間距離を計算しながら自動で走行する。

レベル5(完全自動運転)についても法規制さえクリアできれば技術上実現可能とされている。

特化型AIの鍵を握るデータ


特化型AIは限定的ではあるものの、あらゆる分野で活躍していることがわかる。
今後も活用の範囲は広がり、ビジネス変革にも貢献するだろう。

しかし、活用するには大きな壁がある。それがデータだ。

まずAIが確率を導き出せるだけの十分なデータがなければならない。またデータが大量にあったとしてもAIが精度を出せるとは限らない。データが揃わずに導入を諦めたというケースもある。

また、データがあってもAIが学習できるような状態に整備する必要がある。

AIがデータを学習する方法に基づいて機械学習を分類すると、「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」に分かれる。


教師あり学習


教師ありというのは正解データを用意する。

例えば、人間の画像から性別を判断する場合、「この写真の人は女性」「この写真の人は男性」というようにデータにタグ付けして最初に教えておく。

AIはこのタグを見て、女性ならこういう特徴がある、男性ならこういう特徴がある、ということを大量のデータからパターンを導き出していく。

このタグ付けの作業を「アノテーション」と呼ぶが、これを大量のデータに対して一つひとつ登録していかなければならない。

また、AIが実際に判断して間違っていた場合は、「間違っている」ということを教える必要がある。データの準備と運用以降のメンテナンスにとても労力がかかるのだ。

教師なし学習


教師なし学習は、2012年のGoogleによる猫画像の識別が有名だが、正解データを用意することなく、AIが猫を識別することができた。

正解データを用意する必要はないが、狙った正解を導き出すことができない。
入力した画像を同じような特徴を持つ画像でグルーピングするといったことに使われる。

強化学習


現時点の正解ではなく、将来の価値を最大化させるように判断する。

株式の売買の場合、今株を売って得る利益よりも1週間後に売った方が利益が上がるのであれば、1週間後に実行すると判断する。

これはゲームにも使えるもので、例えば将棋で敵の王将を取ることに最大の報酬を与え、報酬が最大化(=勝利)するために次の一手をどうすればよいかをAIに考えさせる。

「アルファ碁」もディープラーニングと強化学習を組み合わせたものだ。AIが正解を考えるので、人間の考えの及ばないことが導き出せることが期待されている。


いずれにしてもデータを用意することはかなりの労力がかかる作業であり、導入を考える企業の高いハードルとなっている。

その場合は、すでに学習しているAIを使うという方法もある。GoogleやAmazonは学習済みのAIを公開している。

さらにAIを組み込んだ専用ソフトウェア・サービスを利用すれば、学習データを用意しなくても、高度な判定をするAIを利用することも可能だ。

AIを導入するなら、まずこのように簡単に導入できるものから小さく始めるのがコツとなる。

未来のビジネスに欠かせない「AI」という存在


これまでの内容を振り返って整理しよう。

AI・人工知能の基本まとめ
・AIには特化型と汎用型があり、現在実用化されているのは特化型である
・特化型のメインストリームは機械学習であり、画像解析、音声解析、自然言語処理、予測等、幅広い範囲で能力を発揮している
・特化型ではAIが学習するためのデータが大量に必要とされる
・特化型AIをデータの学習方法で分類すると「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」がある。

不確実な時代に生きる企業においては、デジタル技術でビジネスを革新させるDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みに迫られている。

AIはDXの中心的な役割を担う技術といえるだろう。AIの基礎知識を持っていれば、いざ活用する時に適切な準備ができる。

AIをビジネスで活用することも増えてくる中、基本的な知識は近い将来、きっと活用できるはずだ。


総務省|平成28年版 情報通信白書|人工知能(AI)研究の歴史
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc142120.html
人工知能のやさしい説明「What's AI」|(社) 人工知能学会
https://www.ai-gakkai.or.jp/whatsai/

図表以外の画像:Shutterstock
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WRITTEN by

山際 貴子

システムエンジニアとして独立系SI会社等4社を経験し、プロジェクトリーダーとして大規模プロジェクトの開発に携わる。その後、フリーライターとして独立。企業取材、インタビュー、コラム執筆等を中心に活動している。独自の視点から複雑な事象をわかりやすく解説することを得意とする。

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