
減少する労働力への対応策として、各分野へのAI・人工知能の導入が注目されている。
しかしコストの問題から、前向きに検討しにくいという企業の声は少なくない。
そこでぜひ活用したいのが、補助金制度だ。この記事ではAI導入が企業にもたらす効果と、活用可能な補助金について解説していく。
中小企業庁が2019年に発表した資料によると、中小企業の多くはAIやビッグデータについての認識をもってはいるがその活用には至っていない。
AIの認知率は95.1%、対する活用率はわずか1.2%にとどまっている。
活用を阻む大きな要因としては、人材・ノウハウ・知識不足があげられているが多額のコスト負担もそのひとつだ。
思い切ってAI技術に投資をしても、費用対効果が得られる確証がなければ、中小企業にはなかなか手が出せない。
一方で中小企業が抱える経営課題に対して、AIなどの先進技術が有効であるという意見は多い。
すでに技術を導入し、業務の効率化・コスト削減や売上の増加など、企業運営に直結する効果があったと回答している企業は半数以上に上る。
人材の獲得に苦戦する中小企業こそ、AI技術の活用が期待される。在庫管理や仕入れの適正化、顧客へのタイムリーな情報提供や提案など、人的な情報処理能力では難しい部分をAIに任せることで商機発生の可能性が生まれる。
今後、国の労働人口が減少を免れないことから、事業規模に関わらず、AI導入を検討し始めるのが賢明と言えるだろう。
AI導入で頼りにしたいのが補助金制度だ。補助金は国や自治体などが交付するもので、基本的に返済の義務を負わない。試行錯誤を重ねることが目に見えている事業にとっては、ありがたい施策だ。

企業がAI導入を目的としたとき、活用できる補助金を順に紹介していく。
名の通り、「ものづくり」を行う企業が対象となっており、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」だ。生産性の向上を目指す中小企業を対象として、交付される。
2020年の「ものづくり補助金」には一般型・グローバル展開型・ビジネス構築型の3タイプがあるが、AI導入を目的とするのであれば一般型が適用される。補助上限は1,000万円で、補助率は中小が1/2、小規模 2/3となっている。
「ものづくり補助金」の申し込みは、補助金申請システム「Jグランツ)により電子申請で行う。またその際には、事前にはGビズID(アカウント)の取得が必要となる。
正式名称は「ICTイノベーション創出チャレンジプログラム」。
AIを含むICT分野全般が補助対象となる。AIを活用した製品やサービスの開発にあたり、事業化への段階で必要となる資金を支援する取り組みだ。
補助金額は事業化を目指すベンチャー企業などに対しては1億円以内(間接経費30%含む) で、補助率は2/3。1件あたりの補助金交付額は、1年間で5,000万円程度が想定されている。
正式名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業」。
本助成金は生産性の向上に貢献するITツールの導入を対象としている。ソフトウェア以外にサービスの利用でも適用可能だ。
分野の制限は特にないため、一般企業がAIを導入する際にはもっとも活用しやすい補助金と言えるだろう。補助額は30万~450万円、補助率は1/2とされている。
バックオフィス業務の効率化、新規顧客獲得といった施策について、AI技術を取り入れたいと考えている企業はぜひ検討したいところだ。
採択件数は毎年1万件程度で、年3回程度公募が行われているため、時期を逃さず申請できる。
これまでに中小企業がAIを活用した具体事例を紹介しよう。

福岡県にあるクリーニング店では、従業員の高齢化に頭を悩ませていた。
現在8店舗ほど展開しているが、25名いる従業員の平均年齢は48歳。中には70歳を超える人もいる。過疎化が著しい地方にあって、新しい従業員の確保は難しい。
そこでAI技術による店舗の無人化に着手。AIの画像認識により、持ち込まれる衣類の種別を選別する。
50万円ほどのシステム開発費用をかけ、高精度の衣類判別に成功した。
中小製造業共通の課題解決に向け、AIによる実証実験が進められている。
少子高齢化により失われつつあるベテランの知見を、AI技術で継承していく。
画像認識AIを外観検査に活用することで人手を減らすとともに、バラつきのない高品質な製造物が出荷できるようになる。
効果検証では、カメラ画像100枚の学習により生産性が大幅アップできる結果が得られた。
AIの画像認識機能によるレジ装置導入により、レジ作業の簡略化が実現している。
客がパンのトレーをレジ台に置くと、上部にあるカメラが複数の商品を同時に捉え、瞬時にパンの種類・個数・価格から商品代金を割り出すしくみだ。
近年増加する外国人アルバイトなどでも、商品を取り違えることがなくなる。スタッフの入れ替わりがある場合でも、すぐにレジ対応が可能となるのも利点だ。
またレジにかかる時間が大幅に短縮され、顧客満足度の向上にもつながる。
■関連記事
AIを人間が助けることで実現した、ユニークな画像認識AIレジがベーカリーに普及中!
補助金の活用によりコスト面でのハードルが下がることで、AI活用のすそ野が広がっていく。
これまで人手を介して行なっていた作業の自動化や効率化が可能となれば、人材の不足部分が補填され、従業員への負担軽減も実現できる。
中小企業がAI導入を積極的に実施することで新しい視点や工夫が加えられ、さらなる用途の拡大も期待されるだろう。
中小企業のAI・データ活用について - 中小企業庁 - 経済産業省[PDF]
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/smartsme/2019/190626smartsme01.pdf
画像:Shutterstock
しかしコストの問題から、前向きに検討しにくいという企業の声は少なくない。
そこでぜひ活用したいのが、補助金制度だ。この記事ではAI導入が企業にもたらす効果と、活用可能な補助金について解説していく。
中小企業のAI活用の現状
中小企業庁が2019年に発表した資料によると、中小企業の多くはAIやビッグデータについての認識をもってはいるがその活用には至っていない。
AIの認知率は95.1%、対する活用率はわずか1.2%にとどまっている。
活用を阻む大きな要因としては、人材・ノウハウ・知識不足があげられているが多額のコスト負担もそのひとつだ。
思い切ってAI技術に投資をしても、費用対効果が得られる確証がなければ、中小企業にはなかなか手が出せない。
中小企業こそAI導入を考えるべき理由
一方で中小企業が抱える経営課題に対して、AIなどの先進技術が有効であるという意見は多い。
すでに技術を導入し、業務の効率化・コスト削減や売上の増加など、企業運営に直結する効果があったと回答している企業は半数以上に上る。
人材の獲得に苦戦する中小企業こそ、AI技術の活用が期待される。在庫管理や仕入れの適正化、顧客へのタイムリーな情報提供や提案など、人的な情報処理能力では難しい部分をAIに任せることで商機発生の可能性が生まれる。
今後、国の労働人口が減少を免れないことから、事業規模に関わらず、AI導入を検討し始めるのが賢明と言えるだろう。
AI導入で頼りにしたいのが補助金制度だ。補助金は国や自治体などが交付するもので、基本的に返済の義務を負わない。試行錯誤を重ねることが目に見えている事業にとっては、ありがたい施策だ。
AI活用に使える補助金は?

企業がAI導入を目的としたとき、活用できる補助金を順に紹介していく。
中小企業庁「ものづくり補助金」
名の通り、「ものづくり」を行う企業が対象となっており、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」だ。生産性の向上を目指す中小企業を対象として、交付される。
2020年の「ものづくり補助金」には一般型・グローバル展開型・ビジネス構築型の3タイプがあるが、AI導入を目的とするのであれば一般型が適用される。補助上限は1,000万円で、補助率は中小が1/2、小規模 2/3となっている。
「ものづくり補助金」の申し込みは、補助金申請システム「Jグランツ)により電子申請で行う。またその際には、事前にはGビズID(アカウント)の取得が必要となる。
総務省「I-Challenge!」
正式名称は「ICTイノベーション創出チャレンジプログラム」。
AIを含むICT分野全般が補助対象となる。AIを活用した製品やサービスの開発にあたり、事業化への段階で必要となる資金を支援する取り組みだ。
補助金額は事業化を目指すベンチャー企業などに対しては1億円以内(間接経費30%含む) で、補助率は2/3。1件あたりの補助金交付額は、1年間で5,000万円程度が想定されている。
経済産業省「IT導入補助金」
正式名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業」。
本助成金は生産性の向上に貢献するITツールの導入を対象としている。ソフトウェア以外にサービスの利用でも適用可能だ。
分野の制限は特にないため、一般企業がAIを導入する際にはもっとも活用しやすい補助金と言えるだろう。補助額は30万~450万円、補助率は1/2とされている。
バックオフィス業務の効率化、新規顧客獲得といった施策について、AI技術を取り入れたいと考えている企業はぜひ検討したいところだ。
採択件数は毎年1万件程度で、年3回程度公募が行われているため、時期を逃さず申請できる。
補助金活用の参考となる中小企業のAI導入事例
これまでに中小企業がAIを活用した具体事例を紹介しよう。
AIによる無人化を目指すクリーニング店

福岡県にあるクリーニング店では、従業員の高齢化に頭を悩ませていた。
現在8店舗ほど展開しているが、25名いる従業員の平均年齢は48歳。中には70歳を超える人もいる。過疎化が著しい地方にあって、新しい従業員の確保は難しい。
そこでAI技術による店舗の無人化に着手。AIの画像認識により、持ち込まれる衣類の種別を選別する。
50万円ほどのシステム開発費用をかけ、高精度の衣類判別に成功した。
高齢化の波が押し寄せる中小製造業の課題克服
中小製造業共通の課題解決に向け、AIによる実証実験が進められている。
少子高齢化により失われつつあるベテランの知見を、AI技術で継承していく。
画像認識AIを外観検査に活用することで人手を減らすとともに、バラつきのない高品質な製造物が出荷できるようになる。
効果検証では、カメラ画像100枚の学習により生産性が大幅アップできる結果が得られた。
パン屋のレジ作業を軽減
AIの画像認識機能によるレジ装置導入により、レジ作業の簡略化が実現している。
客がパンのトレーをレジ台に置くと、上部にあるカメラが複数の商品を同時に捉え、瞬時にパンの種類・個数・価格から商品代金を割り出すしくみだ。
近年増加する外国人アルバイトなどでも、商品を取り違えることがなくなる。スタッフの入れ替わりがある場合でも、すぐにレジ対応が可能となるのも利点だ。
またレジにかかる時間が大幅に短縮され、顧客満足度の向上にもつながる。
■関連記事
AIを人間が助けることで実現した、ユニークな画像認識AIレジがベーカリーに普及中!
事業展開をサポートするAI導入への補助金活用
補助金の活用によりコスト面でのハードルが下がることで、AI活用のすそ野が広がっていく。
これまで人手を介して行なっていた作業の自動化や効率化が可能となれば、人材の不足部分が補填され、従業員への負担軽減も実現できる。
中小企業がAI導入を積極的に実施することで新しい視点や工夫が加えられ、さらなる用途の拡大も期待されるだろう。
中小企業のAI・データ活用について - 中小企業庁 - 経済産業省[PDF]
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/smartsme/2019/190626smartsme01.pdf
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