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政府がまとめた「AI社会原則」とはどんなものか?理念や狙いについて紹介

人の手では分析しきれないようなデータを、素早く分析して学習していくAI。最近では、日常の様々な場面で利用することも多い。
加速度的に進化が進んでいるAIは、便利な面がある一方リスクもある。
今回は、そんなAIの開発において考慮しておくべきことを政府がまとめた「人間中心のAI社会原則」を紹介する。

はじめに、「人間中心のAI社会原則」が出されることとなった背景を紹介していく。
世界に目を向けると、貧富差の拡大や地球温暖化、プラスチックによる環境問題の発生など問題は山積である。
それらの問題を解決していくための目標として、SDGsが掲げられた。持続可能な世界を目指していくために、各国とも解決策を模索している。
持続可能な世界を目指していくために、AIが重要視されている。
AIは人工知能とも呼ばれており、大量のデータを取り込んで学習できる。その学習から導き出されたデータは、これまでにはない高い付加価値を有している。
そのため、経済発展と課題をともに解決できる手段と考えられているのだ。
そんな便利なAIではあるが、便利さとともに様々な危険性をはらんでいることに注意が必要である。
そのため、各ステークスホルダーが納得するような合意形成を行いつつ、AI利用の方針を考えるべきである。
また、世界だけでなく日本の状況も確認していこう。
日本は、少子高齢化を中心とした社会問題が顕在化している。人材不足はもちろん、高齢者が増えることで社会保障費が高騰し、財政支出も国民の負担も重くなっている。
このような状況を解決するために、政府は「Society 5.0」という考え方を示した。
「Society 5.0」とは、簡単に言うと第5の社会ということだ。
現在は、狩猟や農業、工業を経て、情報社会を生きている。この先の社会が第5の社会だ。
情報社会のように人間が情報を処理するのではなく、社会の中に備え付けられたセンサーで情報を集めてAIが処理していくことになる。自動運転車などがその例だ。
このような社会を目指していくうえでは、AIを利用していくための大枠を決め、同じ方向に歩んでいく必要があるだろう。
そこで、「人間中心のAI社会原則」が取り決められたのである。
基本理念は、以下の3つから成り立っている。
この理念は、AIの利益面だけに目を向けるのではなく、AIを人類の公共財とすることで持続可能な社会を目指すことを重要視している。
人間の尊厳が尊重される社会では、AIが登場しても、あくまでも主体は人間であることを示している。AIに依存しすぎることなく、人間が中心となるような社会の実現を目指す。
2つ目の理念では、AIを活用することによって、多様な価値観をもつ人々がみな幸せになれる世界を目指している。
そこでは、新たな価値観も生まれることだろう。もちろん、その過程では社会に大きな変化を起こしていくことになる。
3つ目の理念は、SDGsにも関連している。持続可能な社会を目指すためにAIを活用していくことが考えられている。特に、日本ではこれまで蓄積してきた科学技術をAIによって更に強化していくことが重要である。
以上のような基本理念をもとに、原則が立てられていることを知っておくとよいだろう。
では、理念をもとにした7つの社会原則はどのような内容なのだろうか。
1つ目の原則は、「人間の尊厳が尊重される社会」と近いものとなっている。
人間が社会の中心であり、AIはあくまでも人間を補助する役割だということだ。AIは憲法や国際的な取り決めを犯すことはできないことを述べている。
2つ目の「教育・リテラシーの原則」では、AIを活用できるようなAIへの理解や倫理観を持つ人材を育成することが必要だと述べられている。
その際には、人々の間で格差が生じないように、義務教育課程などではもちろんのこと、社会人や高齢者に対しても学びの機会が提供される必要があるだろう。
3つ目の原則は「プライバシー確保の原則」だ。これは、AIが当たり前にある社会では個人のあらゆる情報が収集されることにつながる。
これらの情報はパーソナルデータとも呼ばれており、その扱いによって個人の権利が侵害されてはならない。保護と活用のバランスを検討していく必要があるのだ。
4つ目の原則は、「セキュリティ確保の原則」。こちらは、AI自体のセキュリティ確保を求めるものである。
AIはネットワークにつながり膨大な情報を処理していくことになるため、意図的な攻撃に対応できるとは言い切れない。そのため、様々なリスクを想定していくことが必要だ。
5つ目の「公正競争確保の原則」では、特定の企業や国にAIによる利益が集中した ときのことを想定している。
この場合には、特定の国や企業に社会への影響力など が過剰に偏りすぎないようにすることを求めている。
6つ目の原則は、「公平性、説明責任及び透明性の原則」である。ここでは、AIを開発する際に人々を差別してはならないことなど、公平性を担保することを求めている。
また、AIで取得するデータについては、取得の方法や使用の方法などを十分に説明する必要がある。そのための信頼性を確保する仕組み作りの実現を目指していくべきである。
7つ目の原則は、「イノベーションの原則」である。ここでは、産学官民連携や、国際的な協業についても推進していくことが述べられている。
また、データを独占することなく有意義に利用していける環境をつくっていくことにも触れられている。その際には、データにかかわるプライバシーや、セキュリティについて十分に検討することが必要だ。
このような原則は、日本だけでなく世界中のステークスホルダー・国家間の枠組みの中でも実現されるべきであることにも留意する必要がある。
本記事では、「人間中心のAI社会原則」について紹介してきた。
AIが加速度的に進化していく現代では、日本国内だけでなく世界中で枠組みを設けていく必要が出てくるはずだ。
そのような社会に備えるためにも、日本政府のAIに対する原則を知っておくとよいだろう。
人間中心のAI 社会原則 - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/aigensoku.pdf
画像:Shutterstock
加速度的に進化が進んでいるAIは、便利な面がある一方リスクもある。
今回は、そんなAIの開発において考慮しておくべきことを政府がまとめた「人間中心のAI社会原則」を紹介する。
AI社会原則が出された背景とは

はじめに、「人間中心のAI社会原則」が出されることとなった背景を紹介していく。
世界に目を向けると、貧富差の拡大や地球温暖化、プラスチックによる環境問題の発生など問題は山積である。
それらの問題を解決していくための目標として、SDGsが掲げられた。持続可能な世界を目指していくために、各国とも解決策を模索している。
持続可能な世界を目指していくために、AIが重要視されている。
AIは人工知能とも呼ばれており、大量のデータを取り込んで学習できる。その学習から導き出されたデータは、これまでにはない高い付加価値を有している。
そのため、経済発展と課題をともに解決できる手段と考えられているのだ。
そんな便利なAIではあるが、便利さとともに様々な危険性をはらんでいることに注意が必要である。
そのため、各ステークスホルダーが納得するような合意形成を行いつつ、AI利用の方針を考えるべきである。
また、世界だけでなく日本の状況も確認していこう。
日本は、少子高齢化を中心とした社会問題が顕在化している。人材不足はもちろん、高齢者が増えることで社会保障費が高騰し、財政支出も国民の負担も重くなっている。
このような状況を解決するために、政府は「Society 5.0」という考え方を示した。
「Society 5.0」とは、簡単に言うと第5の社会ということだ。
現在は、狩猟や農業、工業を経て、情報社会を生きている。この先の社会が第5の社会だ。
情報社会のように人間が情報を処理するのではなく、社会の中に備え付けられたセンサーで情報を集めてAIが処理していくことになる。自動運転車などがその例だ。
このような社会を目指していくうえでは、AIを利用していくための大枠を決め、同じ方向に歩んでいく必要があるだろう。
そこで、「人間中心のAI社会原則」が取り決められたのである。
AI社会原則の基本理念とは?
基本理念は、以下の3つから成り立っている。
- 人間の尊厳が尊重される社会(Dignity)
- 多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会(Diversity&Inclusion)
- 持続性ある社会(Sustainability)
この理念は、AIの利益面だけに目を向けるのではなく、AIを人類の公共財とすることで持続可能な社会を目指すことを重要視している。
人間の尊厳が尊重される社会では、AIが登場しても、あくまでも主体は人間であることを示している。AIに依存しすぎることなく、人間が中心となるような社会の実現を目指す。
2つ目の理念では、AIを活用することによって、多様な価値観をもつ人々がみな幸せになれる世界を目指している。
そこでは、新たな価値観も生まれることだろう。もちろん、その過程では社会に大きな変化を起こしていくことになる。
3つ目の理念は、SDGsにも関連している。持続可能な社会を目指すためにAIを活用していくことが考えられている。特に、日本ではこれまで蓄積してきた科学技術をAIによって更に強化していくことが重要である。
以上のような基本理念をもとに、原則が立てられていることを知っておくとよいだろう。
7つのAI社会原則とは?
では、理念をもとにした7つの社会原則はどのような内容なのだろうか。
- 人間中心の原則
- 教育・リテラシーの原則
- プライバシー確保の原則
- セキュリティ確保の原則
- 公正競争確保の原則
- 公平性、説明責任及び透明性の原則
- イノベーションの原則
1つ目の原則は、「人間の尊厳が尊重される社会」と近いものとなっている。
人間が社会の中心であり、AIはあくまでも人間を補助する役割だということだ。AIは憲法や国際的な取り決めを犯すことはできないことを述べている。
2つ目の「教育・リテラシーの原則」では、AIを活用できるようなAIへの理解や倫理観を持つ人材を育成することが必要だと述べられている。
その際には、人々の間で格差が生じないように、義務教育課程などではもちろんのこと、社会人や高齢者に対しても学びの機会が提供される必要があるだろう。
3つ目の原則は「プライバシー確保の原則」だ。これは、AIが当たり前にある社会では個人のあらゆる情報が収集されることにつながる。
これらの情報はパーソナルデータとも呼ばれており、その扱いによって個人の権利が侵害されてはならない。保護と活用のバランスを検討していく必要があるのだ。
4つ目の原則は、「セキュリティ確保の原則」。こちらは、AI自体のセキュリティ確保を求めるものである。
AIはネットワークにつながり膨大な情報を処理していくことになるため、意図的な攻撃に対応できるとは言い切れない。そのため、様々なリスクを想定していくことが必要だ。
5つ目の「公正競争確保の原則」では、特定の企業や国にAIによる利益が集中した ときのことを想定している。
この場合には、特定の国や企業に社会への影響力など が過剰に偏りすぎないようにすることを求めている。
6つ目の原則は、「公平性、説明責任及び透明性の原則」である。ここでは、AIを開発する際に人々を差別してはならないことなど、公平性を担保することを求めている。
また、AIで取得するデータについては、取得の方法や使用の方法などを十分に説明する必要がある。そのための信頼性を確保する仕組み作りの実現を目指していくべきである。
7つ目の原則は、「イノベーションの原則」である。ここでは、産学官民連携や、国際的な協業についても推進していくことが述べられている。
また、データを独占することなく有意義に利用していける環境をつくっていくことにも触れられている。その際には、データにかかわるプライバシーや、セキュリティについて十分に検討することが必要だ。
このような原則は、日本だけでなく世界中のステークスホルダー・国家間の枠組みの中でも実現されるべきであることにも留意する必要がある。
AIの発展とともに世界で共通的な枠組みは不可欠
本記事では、「人間中心のAI社会原則」について紹介してきた。
AIが加速度的に進化していく現代では、日本国内だけでなく世界中で枠組みを設けていく必要が出てくるはずだ。
そのような社会に備えるためにも、日本政府のAIに対する原則を知っておくとよいだろう。
人間中心のAI 社会原則 - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/aigensoku.pdf
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