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トライアルによる小売業のAI活用プロジェクト始動、関東初のスマートストアをオープンへ

小野 雅彦 2020.10.3
九州を拠点とするスーパー・トライアルは、小売業界にAIを導入して、店内の顧客の行動分析などを行う「AI ストア」をオープンさせるなど、先駆的な試みで注目を集めている。

そんな小売業のAI活用に旗手・トライアルを中心に、流通やショーケース製造の分野から集った6社が小売AI プラットフォームを立ち上げることになった。

“流通情報革命”を目指す


去る2020年2月25日、流通やテクノロジーを担う企業6社による戦略発表会が都内のホテルにて行われた。

6社とは、株式会社トライアルカンパニー、サントリー酒類株式会社、株式会社日本アクセス、日本ハム株式会社、フクシマガリレイ株式会社、株式会社ムロオ。

各社が連携して目指すのは、日本の小売や流通業界などに潜む社会課題を解決し、流通業界に革命を起こすこと。そのために立ち上げられたのが、リテール AI プラットフォームプロジェクト「リアイル」だ。


テクノロジー先行ではなく、オペレーション重視



この日の発表会で最初に登壇したのは、トライアルカンパニー子会社の株式会社Retail AI代表取締役社長であり、プロジェクトのリーダーである永田洋幸氏。

永田氏は、シリコンバレーにいた頃に、テクノロジー優先で消えていったビジネスをいくつも見てきたと語った上で、次のように述べた。

「だからこそ、オペレーションを重要視しなければならないと思っています。我々は流通産業にあるムダ・ムラ・ムリをAIで改善していくことで、お客様の買物体験を良くしていきます」

同社では、以前よりカスタマーエクスペリエンス向上にアプローチしてきた。陳列商品の欠品などを感知するAI搭載カメラや、セルフレジ機能をもつカートの開発などは、同社の推進するスマートストアになくてはならないもの。

しかし、こうしたテクノロジーに特化するのではなく、リアル店舗で商品と消費者とをデジタルでつなぎ、データを主体とした新たな価値創造を狙うのが、「リアイル」プロジェクトの真の目的だ。


永田氏の語るプロジェクトの理念を受けて、2番目に登壇したのが、サントリー酒類の中村直人氏。

氏は、トライアルカンパニー社のような流通企業がリテール AIの活用により店頭でのマーケティングの高度化を図り、かつ一般消費者には献立の検討時間の簡略化、レジの待ち時間の効率化に寄与する技術を展開することで「ストレスフリーでスマートな買い物体験」の提供を進めていくことは、メーカーとしての使命だと語り、小売業と流通業の連携をさらに強めていきたいと意欲を見せた。

「カメラによって売り場を把握することで、お客様の見えなかった購買行動が明らかになってきている。(中略)クラウド上でデータを一元管理してくことでスマートなライフスタイルが実現すると考えています」と、リアイルプロジェクトがもたらすライフスタイルの変化についても語っている。


日々採取されるデータの分析による新たな価値創造



次に登壇したのが、日本ハムの小村勝氏。小村氏は近年のハム・ソーセージ市場が縮小傾向にあることを取り上げ、AIを活用することで新たな顧客ニーズを掘り起こすと同時に、新たな商品開発、新たな売場構築につなげていきたい、との見解を述べた。

そのために「エリアの状況や情報をしっかりとリテール AIにより分析することで、今までのハム・ソーセージ売り場にはない、新しい価値を創造していきたい」と意気込む。


4番目に登壇した日本アクセスの今津達也氏は、人口減少、少子高齢化、グローバル化などの社会課題がもたらす事業の持続的成長の難しさを挙げた上で、売り場の分析データ活用によるチャンスロス防止について取り組むと語った。

「各種データを組み合わせることで、チャンスロスを可視化できる可能性があり、ある程度の定量化はできることがわかった。(中略)今後は可視化されたデータを元に、発注システムへの連動や廃棄との関連性を見ていく必要がある」と、分析データを活用するイメージについて説明した。


続いて登壇したのが、ムロオの山下俊一郎氏。山下氏は物流の観点から、その課題とAIの有効的な活用について説明した。

法律の改定やそれにまつわる人件費など、物流業界の抱える厳しい現状を明らかにした上で、氏は課題ひとつひとつにおける部分最適ではなく、いかにして全体最適をしていくかが重要と語った。そのためには、一企業だけが改善に取り組むには限界があるとし、新たな物流プラットフォームの形成を目指すという。

「異業種他社と組むことで互いのエリア内の倉庫・配送の効率を上げる、専用から汎用物流センター、そして、AI物流センターへという考え方を進めています」と、広範囲の企業を巻き込む改革の方向性を示した。


最後に登壇したフクシマガリレイの福島豪氏は、ショーケースメーカーとしての本プロジェクトにおける役割について述べた。

その内容は「従来の『鮮度管理と省エネ』だけでなく、(中略)『売れる AIショーケース』をつくっていくという発想の転換、デジタルトランスフォーメーションによるメディア化で活性したリアル店舗の実現、リテール AIの普及を加速させるインフラ構築・メンテナンスを担う」というもの。

これらを追求していくことで、小売店に訪れる一般消費者が「買い物を楽しめるスーパー」を増やし、流通産業を変えていくとしている。

関東初のスマートストア誕生で寄せられる大きな期待



プロジェクト名の「リアイル」とは、REAL(リアル)という綴りにAIを盛り込んだ造語。バーチャルではなく、“リアルで愛のあるプラットフォーム”という想いも込められているという。

この日、各社が取り組む技術開発を結集したスマートストア「トライアル長沼店」が、4月24日(金)にリニューアルオープンすることが発表された。


セルフレジ機能の搭載されたレジカートや店内の人の流れを感知するAI カメラなど、さまざまな形でのAI技術を実装した店舗は関東初となる。


株式会社Retail AI
https://www.retail-ai.jp/
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WRITTEN by

小野 雅彦

フリーライター。経営者や著名人へのインタビュー、時事問題、地産地消で地域創生を図ろうという企業や団体などへの取材も多い。日本史の記事も得意としており著書に『家康の家臣団はなぜ最強組織になったのか』(竹書房新書)がある。

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