AI入門
<特集>初心者向け AIの活用How To
AIの得意なこと、不得意なことを知ろう【人工知能活用の基礎】

AI・人工知能をビジネスで活用する際に、最初にぶつかる壁は「AIに何ができるのか? 」ということだ。
AIは生活者が当たり前のように使っているものではあるが、広範囲の分野で使われており、目に見えないものであるため、具体的にどんなことができるのかがわからない。
AIの得意なこと、不得意なことを押さえていけば、AIに何ができるのかが見えてくるはずだ。
2012年にGoogleが猫を識別するディープラーニングを開発したというニュースにより、画像解析をはじめとするAIの活用は夜明けを迎えた。
しかしこの時点ではAIはまだ研究者のものであり、ビジネスで活用するには敷居が高かった。また、AIを導入するためには、特徴量を見つけるための大量のデータが必要だが、必要なデータがこの世に存在しないというケースもある。
さらに大量のデータをAIが学習しやすいように整備する必要があり、AIを導入する企業側にとってみると高いハードルとなっていた。
しかし、最近ではAIの学習済みのモデルに対して自社に合うように学習させる方法(転移学習)で少量のデータでも活用が可能となった。
また、AIを組み込んだ専用ソフトウェアやサービスであれば、学習データを用意しなくてもすぐに使える場合もある。システム構築の労力も抑えられる時代になりつつあるのだ。
今後は、エンジニアでない人がAIを導入し、ビジネスに価値を生み出すことが当たり前の時代になるだろう。
とはいえ、AIは顔認証や音声アシスタントなど、生活で身近に使っているものの、AIがどんなことができるのか、ということをはっきりと把握している人は少ないのではないだろうか。
なぜなら、AIは具体的に目に見えるものではなく、ソフトウェアの一部として組み込まれている、いわば“黒子の存在”だからだ。
そこでここからはAIの得意なこと、不得意なことを中心に紹介しよう。

単純作業を大量に、正確にこなすのは従来からコンピューターが得意としてきたことだ。
そしてAIの登場により、さまざまな分野で「識別」の能力が飛躍的に向上し、人間以上の価値を提供するケースも出てきている。
現時点でのAIの得意とすることには、次のようなものが挙げられる。
AIは、非テキストベースのデータを圧倒的な精度で解析できるという強みがある。
画像から年齢性別を推論したり、映像の中で人通りをカウントしたり、音声で入力されたものを自然言語処理に組み合わせて文字に変換したり、といったことができる。
こうした識別は、人間でもとても簡単にできる。しかし人間がやると大量の作業が必要なものでも、AIであれば迅速に処理できる。
あるいは人間がチェックしなければならない作業を、AIが肩代わりすることもできる。
Google DeepMindによって開発された「AlphaGo(アルファ碁)」は、人類最強と称えられたプロ棋士に勝利している。
もはや囲碁に関して人間はAIにはかなわないが、これはどんな状態であれば「勝利」であるのか、ルールとして厳格に定められているからだ。
囲碁に限らずゲームの分野でAIが活躍しているのは、厳格なルールあってこそと言える。
「明日、アイスクリームは何個売れるか」「一週間後のこの銘柄の株価はいくらか」といったような予測は、AIが得意とするものだ。
データから数値の予測を導き出すということは、AIが誕生する前から統計で行われている。
もともとAIは統計モデルがベースとなっており、統計ツールで予測するよりも大量のデータを使って精度を高め、リアルタイムに近い処理速度で実行することを実現している。

AIに対する最大の誤解が「AIは何でもできる」だ。
現時点でのAIは、極めて限定された分野に特化して人間以上のパフォーマンスを出すものなので、魔法のように何でもできるわけではない。
AIが不得意なことは以下のようなことである。
子どもでも猫を1回見れば、次からは猫を識別することはたやすい。しかし、現時点でのAIは確率で推論するため、事前に大量のデータが必要となる。
学習させるために大量のデータに対して正解をタグ付けして学習させる必要もある。そのため、少ないデータで推論することは困難だ。
しかし人間の知能と同等のものを目指す汎用型AIでは、人間はデータが用意されていなくても自ら情報を取りに行って学習する研究も行われている。
いずれは少ないデータでもAIが使えるようになるかもしれない。
AIの自然言語処理はかなりの精度になっているが、文章の意味を理解しているわけではない。
そのため「いいです」という言葉が、OKなのかNGなのかの判断をすることも難しい。
また「この会社に貢献できることは何か」といったあいまいな問いも、人間であれば自分の立場や状況を考慮して、その人なりの答えを導き出せるが、AIが推論することは難しい。
AIが得意な「厳格なルールにおける判定」「数値化されていることを推論する」の裏返しでもある。
ビジネスシーンで、ルールで厳密に判断できることは意外と少ないのではないだろうか。臨機応変に判断を変えることも多く、諸般の事情からやむをえず合理的でない判断をする場合もある。
また、数値化されていないものは、明確な差がでないため合理的でないともいえる。
人間が誰しも持つ倫理観についても、文化や時代に影響を受けるため、絶対的な合理性がない。
それではAIの得意とすること、不得意とすることを振り返っておこう。
・「少ないデータの推論」「意図を理解する」「合理的でない判断」は不得意である
AIの技術の進展は、2010年代に入って加速している。
以前はできなかったことが今はできるようになっている、といったケースも珍しくない。
現在できないことでも、将来はできるようになる可能性はあるので、データを整備しつつ、技術情報をウォッチしておくことが大切だ。
<関連URL>
D X レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ | 経済産業省[PDF]
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
画像:Shutterstock
AIは生活者が当たり前のように使っているものではあるが、広範囲の分野で使われており、目に見えないものであるため、具体的にどんなことができるのかがわからない。
AIの得意なこと、不得意なことを押さえていけば、AIに何ができるのかが見えてくるはずだ。
エンジニアでなくてもAIが導入できる時代に
2012年にGoogleが猫を識別するディープラーニングを開発したというニュースにより、画像解析をはじめとするAIの活用は夜明けを迎えた。
しかしこの時点ではAIはまだ研究者のものであり、ビジネスで活用するには敷居が高かった。また、AIを導入するためには、特徴量を見つけるための大量のデータが必要だが、必要なデータがこの世に存在しないというケースもある。
さらに大量のデータをAIが学習しやすいように整備する必要があり、AIを導入する企業側にとってみると高いハードルとなっていた。
しかし、最近ではAIの学習済みのモデルに対して自社に合うように学習させる方法(転移学習)で少量のデータでも活用が可能となった。
また、AIを組み込んだ専用ソフトウェアやサービスであれば、学習データを用意しなくてもすぐに使える場合もある。システム構築の労力も抑えられる時代になりつつあるのだ。
今後は、エンジニアでない人がAIを導入し、ビジネスに価値を生み出すことが当たり前の時代になるだろう。
とはいえ、AIは顔認証や音声アシスタントなど、生活で身近に使っているものの、AIがどんなことができるのか、ということをはっきりと把握している人は少ないのではないだろうか。
なぜなら、AIは具体的に目に見えるものではなく、ソフトウェアの一部として組み込まれている、いわば“黒子の存在”だからだ。
そこでここからはAIの得意なこと、不得意なことを中心に紹介しよう。
AIが得意とすることとは

単純作業を大量に、正確にこなすのは従来からコンピューターが得意としてきたことだ。
そしてAIの登場により、さまざまな分野で「識別」の能力が飛躍的に向上し、人間以上の価値を提供するケースも出てきている。
現時点でのAIの得意とすることには、次のようなものが挙げられる。
画像・音声・映像の解析
AIは、非テキストベースのデータを圧倒的な精度で解析できるという強みがある。
画像から年齢性別を推論したり、映像の中で人通りをカウントしたり、音声で入力されたものを自然言語処理に組み合わせて文字に変換したり、といったことができる。
こうした識別は、人間でもとても簡単にできる。しかし人間がやると大量の作業が必要なものでも、AIであれば迅速に処理できる。
あるいは人間がチェックしなければならない作業を、AIが肩代わりすることもできる。
厳格なルールにおける判定
Google DeepMindによって開発された「AlphaGo(アルファ碁)」は、人類最強と称えられたプロ棋士に勝利している。
もはや囲碁に関して人間はAIにはかなわないが、これはどんな状態であれば「勝利」であるのか、ルールとして厳格に定められているからだ。
囲碁に限らずゲームの分野でAIが活躍しているのは、厳格なルールあってこそと言える。
数値化されていることを推論する
「明日、アイスクリームは何個売れるか」「一週間後のこの銘柄の株価はいくらか」といったような予測は、AIが得意とするものだ。
データから数値の予測を導き出すということは、AIが誕生する前から統計で行われている。
もともとAIは統計モデルがベースとなっており、統計ツールで予測するよりも大量のデータを使って精度を高め、リアルタイムに近い処理速度で実行することを実現している。
AIがまだ不得意なこととは

AIに対する最大の誤解が「AIは何でもできる」だ。
現時点でのAIは、極めて限定された分野に特化して人間以上のパフォーマンスを出すものなので、魔法のように何でもできるわけではない。
AIが不得意なことは以下のようなことである。
少ないデータで推論をする
子どもでも猫を1回見れば、次からは猫を識別することはたやすい。しかし、現時点でのAIは確率で推論するため、事前に大量のデータが必要となる。
学習させるために大量のデータに対して正解をタグ付けして学習させる必要もある。そのため、少ないデータで推論することは困難だ。
しかし人間の知能と同等のものを目指す汎用型AIでは、人間はデータが用意されていなくても自ら情報を取りに行って学習する研究も行われている。
いずれは少ないデータでもAIが使えるようになるかもしれない。
文脈などの意図を理解する
AIの自然言語処理はかなりの精度になっているが、文章の意味を理解しているわけではない。
そのため「いいです」という言葉が、OKなのかNGなのかの判断をすることも難しい。
また「この会社に貢献できることは何か」といったあいまいな問いも、人間であれば自分の立場や状況を考慮して、その人なりの答えを導き出せるが、AIが推論することは難しい。
合理的ではない判断を下す
AIが得意な「厳格なルールにおける判定」「数値化されていることを推論する」の裏返しでもある。
ビジネスシーンで、ルールで厳密に判断できることは意外と少ないのではないだろうか。臨機応変に判断を変えることも多く、諸般の事情からやむをえず合理的でない判断をする場合もある。
また、数値化されていないものは、明確な差がでないため合理的でないともいえる。
人間が誰しも持つ倫理観についても、文化や時代に影響を受けるため、絶対的な合理性がない。
AIの進化を見逃さないで
それではAIの得意とすること、不得意とすることを振り返っておこう。
AI・人工知能の得意なこと/不得意なこと
・AIは「非テキストベースのデータ解析」「厳格なルールによる判定」「数値化されていることを推論する」を得意とする・「少ないデータの推論」「意図を理解する」「合理的でない判断」は不得意である
AIの技術の進展は、2010年代に入って加速している。
以前はできなかったことが今はできるようになっている、といったケースも珍しくない。
現在できないことでも、将来はできるようになる可能性はあるので、データを整備しつつ、技術情報をウォッチしておくことが大切だ。
<関連URL>
D X レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ | 経済産業省[PDF]
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
画像:Shutterstock
WRITTEN by
山際 貴子
システムエンジニアとして独立系SI会社等4社を経験し、プロジェクトリーダーとして大規模プロジェクトの開発に携わる。その後、フリーライターとして独立。企業取材、インタビュー、コラム執筆等を中心に活動している。独自の視点から複雑な事象をわかりやすく解説することを得意とする。
<特集>初心者向け AIの活用How To
- AIの得意なこと、不得意なことを知ろう【人工知能活用の基礎】